『半世界』
2019年製作/日本映画/上映時間:120分/G/2019年2月15日日本公開
監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎
池脇千鶴 ほか
『人類資金』などの阪本順治監督のオリジナルストーリーで、稲垣吾郎が主演を務めた人間ドラマです。
炭焼き職人として生きる男が旧友との再会をきっかけに自身を見つめ直す姿が描かれます。
あらすじ
とある地方都市。山中にある炭焼き窯で、炭焼き職人として備長炭を製炭する39歳の紘(稲垣吾郎)は、帰郷してきた中学時代からの友人である元自衛官の瑛介(長谷川博己)と再会する。彼の一言を契機に、紘は父親から何となく継いで炭焼きの仕事をこなし、仕事を理由にして家庭のことを妻・初乃(池脇千鶴)に任せていたことに気付く。さらに別の同級生・光彦(渋川清彦)からは、息子の明に対して無関心だと言われてしまう。紘は仕事や家族に向き合おうと決意する一方、瑛介の過去を知り……。
(シネマトゥデイより)
とある地方都市で育った同級生3人が、40歳を目前に再会し、人生を見つめ直すきっかけになるヒューマン・ドラマです。
2018年・第31回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
間もなく見放題終了とのことと、yahoo!映画レビューなど高評価だったこともあり、本作を選びました。
Amazonプライムビデオはなぜか今月中旬で見放題終了作品が多く、観たい作品、気になる作品が多いのですが、正直全部鑑賞できるか難しいです。
山中の炭焼き窯で備長炭の職人として生計を立てている紘の前に元自衛官の瑛介が現れた。突然故郷に帰ってきた瑛介から紘は「こんなこと、ひとりでやってきたのか」と驚かれるが、紘自身は深い考えもなく単に父親の仕事を継ぎ、ただやり過ごしてきたに過ぎなかった。
同級生の光彦には妻・初乃に任せきりの息子への無関心を指摘され、仕事のみならず、反抗期である息子の明にすら無関心だった自分に気づかされる。やがて、瑛介が抱える過去を知った紘は、仕事、そして家族と真剣に向き合う決意をする・・・。
旧友3人の男たちの絆を描いた作品というと、クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』を思い出してしまいますが、本作は殺人事件のような劇的な展開は無く、ごく普通の人たちの生きる姿を自然体に描いております。
どこかぎこちない生き方をしている主人公に比べ、しっかり周りも見え、物事に対応しているその妻の姿がすばらしいと思いました。
演じる池脇千鶴さん、いつもながらの名演。
タイトルの『半世界』とはどういう意味を持っているのか?
いろんなことを考えさせられました。
自分の生きている世界はすべてでは無い。
まったく知らない世界がこの世には多く存在する。
しかし、それをすべて知ることは不可能。
人はもがき、苦しみ、そして前へ歩き出すことができる。
そうして自分の世界は広がっていくのですが、やはりすべてを知ることはできない。
『半世界』という自分のいる、そして暮らす世界が、自分にとっての「すべての世界」である。
しかし、それは決して悪いことでは無い。
そのようなテーマの作品だと思いました。
人間とは、なんて優しく温かい生きものなのだろうと思わせてくれる映画です。
旧友3人がそれぞれ弱さを持っており、だらしなさすら感じさせる。
しかし、そこを責めるのではなく、補う姿が感動を呼びます。
完ぺきな人間など存在しない。
足りないところを助け合い、人は生きている。
そんな姿を映し出した映画だと思いました。
炭を焼く音。
備長炭を叩き響く音。
それらがなんとも言えない心地良さを感じさせてくれます。
細かい描写が実に良くできております。(ここが前の記事の『ヴィンセントが教えてくれたこと』と違うところ)
中学生の息子がイジメを受けていると思っている池脇千鶴さん演じる母親が、その仲間が家へ遊びに来たときチャーハンを作ってあげる。
仲間は完食しているのに、息子だけ手をつけていないのを見て、イジメが現実だと悟るシーン。
日本映画はセリフで説明することが多い中、ワンカットの描写で真実を知るという作りの上手さは凄いと思いました。
ラストがあまりにも唐突かな~と思ったところと、炭焼き職人として、稲垣吾郎さんはあまりに綺麗過ぎるお顔だな~と感じたところ以外は文句なし。
地味な作品ですが、しっかりとした人間描写のある良質の日本映画です。