『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
原題:Nebraska
2013年製作/アメリカ映画/上映時間:115分/G/2014年2月28日日本公開
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ブルース・ダーン
ウィル・フォーテ
ジューン・スキッブ ほか
『ファミリー・ツリー』などのアレクサンダー・ペインがメガホンを取り、頑固な父と息子が旅を通して家族の絆を取り戻す様子を描くロードムービーです。
主演のブルース・ダーンが、2013年・第66回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞。
あらすじ
100万ドルが当たったという通知を受け取ったウディ(ブルース・ダーン)。それはどう見てもインチキだったが、徒歩でもモンタナからネブラスカまで金を受け取ろうとするウディに息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)が付き添うことに。こうして始まった父と息子の4州をまたぐ車での旅。途中、立ち寄った父の故郷で、デイビッドは父の意外な過去を知ることになる。
(シネマトゥデイより)
『サイドウェイ』のアレクサンダー・ペイン監督が、頑固者の父親と、そんな父とは距離を置いて生きてきた息子が、旅を通して心を通わせる姿をモノクロームの映像で描いたロードムービーです。
第86回(2014年)アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演男優賞ほか、計6部門ノミネート。
BDにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
実を言いますと我が家のWi-Hiの調子が悪く、Amazonプライムビデオが映らなくなってしまいました。
しばらく映画鑑賞はBDになると思います。
以前録画しておいて、そのまま放置してしまっていたので、今回本作を選びました。
モンタナ州に暮らす大酒飲みで頑固な老人ウディのもとに、100万ドルを贈呈するという明らかに胡散臭い手紙が届く。すっかり信じ込んでしまったウディは、妻や周囲の声にも耳を貸さず、歩いてでも賞金をもらいにいくと言って聞かない。
そんな父を見かねた息子のデイビッドは、無駄骨と分かりつつも父を車に乗せてネブラスカ州を目指すが、途中で立ち寄ったウディの故郷で両親の意外な過去を知る・・・。
大金の100万ドルが当選したと信じ、モンタナ州からネブラスカ州へ行こうとする頑固な父親と、放っておけない息子が自動車で旅をする全編モノクロで描かれるロードムービーです。
映像の美しさを背景に、父親の知られざる一部を知っていく息子の姿がホンワカしたタッチで描かれていきます。
モノクロの美しい映像で描かれる広大な風景と、そこに映し出されるちっぽけな人間たち。
この映像感覚は、推測ではありますが、これは人間が見た視線では無く、神様が人々の行動を見つめる視線のような感じに思いました。
また、メールや大金当選詐欺という現代的なものを描きながら、時代設定を特定しない映画の作りの上手さを感じさせます。
個人的な感想になってしまいますが、私も登場人物と同じように父親とあまり上手くいっておらず、父もアルコール中毒で64歳で他界してしまいました。
画面を通して、ブルース・ダーン演じる父親とウィル・フォーテ演じる息子の姿がどことなく他人に思えず、また、彼らのような旅を自分もしたかった、父親と思い出を残したかったなどと思ってしまいました。
父親と息子のお話しだと思っておりましたら、登場するお母さんのインパクトが絶大。
(自称)カトリックで他人を見下しまくる姿と墓地で毒舌吐きまくるセリフには爆笑してしまいました。
バラバラになっていた4人家族が、この、ある意味詐欺と分かるこのくだらない旅を通してお互いの気持ちを理解し分かり合う・・・。
ありきたりな設定とも言えますが、ブルース・ダーン演じるお父ちゃんの行動が分かってやっているのか?または本当にボケてしまっているのか分からないところに面白さがあります。
「お金の話しをしてはダメだよ」と言われながら、酒場で暴露してしまう父親。
その話しを聞いたことから、「たかりに気をつけろ」などと言っておきながら彼にお金をせびる父親の友人たち。
人間の嫌な一面を映し出しながら、その嫌なヤツらから嫌っていたはずの父親を守ろうとする息子の心の優しさ。
父親を憎んでいる・・・のであれば、父親と旅には出ないと思います。
父親に社会の現実を見せようとして、実際は自分が実際の父親の姿を知ることになる映画の面白さ。
賞金を受け取りに行こうと高速道路を歩く父親。
どっちから来たのかと警官に聞かれ後ろを指さす。
どっちへ行くのかと聞かれると前を指さす。
まさに人生を語っているかと思えるセリフです。
人生は一本道。
いずれ目的地に近づくにつれ、老いというものと直面することとなります。
もちろん賞金はもらえませんでした。
ですが、それ以上のものを手にした親子。
その姿が優しく、暖かで心が癒やされました。
親は子どもに「何か残してやりたい」と願う。
その気持ちほど、子どもにとって嬉しいものは無いのではと思います。
監督は小津安二郎監督がお好きなようで、どことなく小津作品に共通するような雰囲気もある作品で、アメリカのド田舎を舞台としながら、日本人にも楽しめる映画に仕上がっていたと思いました。
本年はこれが最後の記事になると思います。
皆様、良いお年をお迎えください。
ありがとうございました。