『カセットテープ・ダイアリーズ』
原題:Blinded by the Light
2019年製作/イギリス映画/上映時間:117分/G/2020年7月3日日本公開
監督:グリンダ・チャーダ
出演:ヴィヴェイク・カルラ
クルヴィンダー・ディール
ミーラ・ガナトラ ほか
ジャーナリスト、サルフラズ・マンズールの回顧録をベースにした青春ドラマです。
1980年代のイギリスを舞台に、パキスタン移民の少年がブルース・スプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく姿が描かれます。
あらすじ
1987年のイギリス。ルートンという町に住むパキスタン系のジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)は、家庭のルールや伝統、人々が持つ移民に対する偏見から解放されたいと思っていた。ウォークマンでペット・ショップ・ボーイズを聴いていたジャベドはある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽と出会う。彼は、鬱屈した気持ちを吹き飛ばすような楽曲に夢中になる。
(シネマトゥデイより)
’80年代のイギリスを舞台に、パキスタン系の高校生が、ブルース・スプリングスティーンの音楽と出会い、新たな自分を見つけ出す青春映画です。
スプリングスティーン自身の協力のもと、未発表曲を含めた楽曲が多く使用されております。
BDにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
本当はAmazonプライムビデオで『オーシャン○8』を観るつもりでしたが、「今すぐ観る」をクリックしたら、輪っかしか映らなくなり、またまたWiFiの調子が悪くなり、手っ取り早く、近くにあったBDで観ていない映画・・・という理由で本作を選びました。(もちろんいずれ観る予定でしたが)
ちなみに本作はAmazonプライムビデオでも見放題で鑑賞できます。
1987年、イギリスの田舎町ルートン。音楽好きなパキスタン系の高校生ジャベドは、閉鎖的な町の中で受ける人種差別や、保守的な親から価値観を押し付けられることに鬱屈とした思いを抱えていた。しかしある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽を知ったことをきっかけに、彼の人生は変わり始める・・・。
1980年代中判から後半、自分も主人公同様高校生活を送っていたので、共感しまくりのキャラクター、そしてストーリーでした。
今やスマホでどこでも音楽を楽しめる時代ですが、当時はSONYが生み出した”ウォークマン”が外出先で音楽を楽しむものとして欠かせないものでした。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも登場しておりました。
’80年代は日本でも洋楽ブームで、自分もアメリカのミュージシャンの音楽ばかり聴いておりました。
・・・ただ、スプリングスティーンはそれほどハマらなかったかな?
劇中セリフで登場しましたが、どちらかと言うとスプリングスティーンは’80年代後半の高校生からすると、”お父さん世代のミュージシャン”だったみたいです。
自分がハマった洋楽は最初はこの映画の舞台のUKのものですね。
ザ・ビートルズ、ポール・マッカートニー、ジョン・レノン、クイーン。
続いてアメリカはビリー・ジョエル、ホール&オーツがお気に入りでした。
’80年代は映画の主題歌とタイアップしたものも大ヒット曲が多く、『フラッシュダンス』、『フットルース』、『トップガン』などの曲も良かったです。
そして、絶対忘れていけないのは、マイケル・ジャクソン!
映画では校長先生が「ティファニーが最低なのは私も知っている」というセリフがありましたが、ティファニーも大好きで、来日公演で両国国技館へ足を運びました。
自分は平気だったのですが、ほかの方のレビューを拝読すると、スプリングスティーンが好きで無い、知らない人で「受けつけ無かった」という意見も多かったです。
実話を基に、主人公は150回もスプリングスティーンのコンサートに行ったくらいの人なので、全編スプリングスティーンを賞賛しまくる内容になっていたのは事実です。
スプリングスティーンの音楽と同様に重く描かれる、英国でのパキスタン人への差別。
当時のマーガレット・サッチャー首相政権がもたらした「古き良きイギリスを取り戻す」政治は人種差別、そしてパキスタン人を追い出そうとする運動にまで発展します。
本作は、これまた遠回りながら移民排除のトランプ政権批判のメッセージが込められた映画と言えるかもしれません。
弱き者の代弁者のようなスプリングスティーンの曲の歌詞が効果的に使われており、それが感動を呼びます。
暴力で対抗できない主人公は”言葉”というものを武器に、理不尽なものに立ち向かっていきます。
主人公と恋人が日本映画の青春映画と違い、美男美女で無いところが良かった。(失礼!)
また、かなり古い考えの持ち主で、息子を理解しない父親とのエピソードも多少臭いところもありましたが、最後、息子を理解してあげるシーンは良かったです。
映画の内容と関係ないことですが、スプリングスティーンのポスターで埋め尽くされている主人公の部屋に唯一違うポスターが貼られていて、それが、なんと『戦場のメリークリスマス』のポスターだったのは、日本人としては嬉しかったです。
青春映画としても音楽映画としても悪い出来ではありません。
と、言うより、良く出来た映画だと思います。
ただ、運が悪いのが、本作より先にイギリス製音楽映画で、名作『ボヘミアン・ラプソディ』(フレディ・マーキュリーもパキスタン人です)、傑作『イエスタデイ』という作品が作られていたこと。
やはりスプリングスティーンよりクイーンやザ・ビートルズの方が正直、多くの人の心に響くものがあると思います。
”ボス”の愛称で親しまれているスプリングスティーン。
私の世代の”ボス”は石原裕次郎さんですね。