『アーニャは、きっと来る』
原題:Waiting for Anya
2019年製作/イギリス・ベルギー合作映画/上映時間:109分/G/2020年11月27日日本公開
監督:ベン・クックソン
出演:ノア・シュナップ
フレデリック・シュミット ほか
スティーヴン・スピルバーグ監督によって映画化された『戦火の馬』の原作者、マイケル・モーパーゴの児童書を原作にした人間ドラマです。
ナチス占領下のフランスを背景に、戦時下における一人の少年の葛藤が描かれます。
あらすじ
1942年、13歳のジョー(ノア・シュナップ)は、フランス・ピレネー山脈の麓にあるナチス占領下の小さな村で羊飼いをしながら暮らしていた。ある日、彼はユダヤ人のベンジャミン(フレデリック・シュミット)と出会い、ユダヤ人の子供たちをひそかにスペインに逃がすという計画を手伝うことになる。一方で、ジョーはドイツ軍の下士官とも親しくなっていく。
(シネマトゥデイより)
イギリスの児童文学作家マイケル・モーパーゴの同名小説を映画化。
ナチス占領下のフランスを舞台にユダヤ人救出作戦の行方が描かれます。
Netflixドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のノア・シュナップが主演を務め、祖父アンリをジャン・レノ、救出作戦の主導者オルカーダをアンジェリカ・ヒューストンが演じております。
BDにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
『シンドラーのリスト』を観て衝撃を受けて以来、ホロコーストものは歴史の勉強になると思い、本作に興味を持ちました。
原作はまったく知りませんでした。
1942年、ピレネー山脈の麓にある小さな村。生活の大半を羊飼いとして過ごす13歳の少年ジョーは、ユダヤ人の男性ベンジャミンと出会う。彼はユダヤ人の子どもたちを安全なスペインへ逃がす計画を企てており、ジョーも手伝うことに。その一方で、ジョーは個人的な悲しみの感情を共有することで、ドイツ軍の下士官と親しくなる。
ドイツの労働収容所から帰国したジョーの父親は荒れていたが、ジョーのユダヤ人救出作戦への関与を知ると協力を約束。村人たちが一致団結して子どもたちを逃がす日が迫る中、ベンジャミンが待つ娘アーニャは一向に現れず・・・。
なんと言いましょうか?
ナチスの残虐さや、戦争の恐ろしさはそれほど映し出されず、フランスのピレネー山脈の麓の小さな村、羊飼いをして暮らす村人たちの物語が、とてもほのぼのとしていて、まるでアニメ「世界名作劇場」を観ている感覚でした。
主人公の羊飼いの少年の名前がジョーでは無くペーターだったら”ドンピシャ”だったのですが・・・。
児童文学が原作ということで、かなりソフトな戦争映画になっております。
ウソを描いているワケでは無いので、それは問題無いのですが、やはり大人の自分から観ると、インパクトの弱い印象が生じてしまいます。
静かな村に突如ナチス兵がやって来る。
村人に恐怖を与える・・・かと思ったら、そのようなことは一切せず、村人も普通に暮らしている。
敵対するフランスとドイツの関係からすると、不思議な光景なのですが、これがそれほど違和感がありません。
下士官の男はジョーに言います。
「自分も同じような山で育った」。
島国・日本に暮らす人間にはピンとこないかもしれませんが、敵対しあう国も地がつながっていることを示すセリフになっております。
ナチス兵を極悪非道の悪人に描くステレオタイプにしなかったところは少し面白かったですが、あまりに戦争を背景としているストーリーとしては優しすぎるところは気になりました。
子どもさんにあまり残酷なシーンを観せたくない気持ちも分かりますが、「臭いものに蓋をする」でもいけない気がいたしました。
ドイツ軍に監視された中で、どうやって7人(だったっけな?)の子どもを連れて国境を越え、スペインに逃げるかが本作の見せ場・・・のはずなのですが、あっさり描かれていて、スリルがありませんでした。
また、映像で観たいと思うものをセリフで簡略化してしまう”手抜きさ”も多く、ここは残念に思いました。
戦時下にありながら、登場シーンすべてメイクバッチリのアンジェリカ・ヒューストンには驚きましたが、それ以上(?)に美しいピレネー山脈の光景に心が癒やされる映画でした。
ホロコーストものとしては弱いですが、子どもさんたちに「過去、このようなことがあった」と伝える作品としては「良し」と言えるのではないでしょうか?
ちなみにタイトルに使われているユダヤ人少女”アーニャ”は物語に特に重要では無く、ジョーの飼っている羊の登場シーンの半分も出ておりません。