『ドライブ・マイ・カー』
2021年製作/日本映画/上映時間:178分/R15+/2021年8月20日日本公開
監督:濱口竜介
出演:西島秀俊
霧島れいか ほか
村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を『寝ても覚めても』などの濱口竜介が監督と脚本を手掛け映画化した作品です。
妻を失い喪失感を抱えながら生きる主人公が、ある女性との出会いをきっかけに新たな一歩を踏み出す姿が描かれます。
2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画では初となる脚本賞を受賞。
2022年・第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞にノミネートされる快挙を成し遂げたほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネート。日本映画としては『おくりびと』以来13年ぶりに国際長編映画賞(旧外国語映画賞)を受賞。
あらすじ
脚本家である妻の音(霧島れいか)と幸せな日々を過ごしていた舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)だが、妻はある秘密を残したまま突然この世から消える。2年後、悠介はある演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島に向かう。口数の少ない専属ドライバーの渡利みさき(三浦透子)と時間を共有するうちに悠介は、それまで目を向けようとしなかったあることに気づかされる。
(シネマトゥデイより)
村上春樹の短編小説を原作に描くヒューマンドラマです。
主演に西島秀俊。
dTVにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
dTV、初レンタルで本作を選びました。(『スパイダーマン~』、『ゴーストバスターズ~』まだお値段高かった)
・・・と言ってもポイントを使ってのレンタルですが・・・。
これだけ国際的に高い評価の日本映画だと、さすがに観てみたくなります。
映倫の区分ですが、劇場公開版はPG12、BDなどの映像ソフト、AmazonプライムビデオやdTVなどのネット配信のインターナショナル版はR15+指定になっております。
舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。
2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく・・・。
村上春樹氏の原作は未読です。
50ページくらいの短い物語だそうですが、それを大幅に脚色し、日本映画としては異例の約3時間という長さの作品に仕上げた濱口竜介監督の技量・力量に感服。
映画は人間の持つ多面性や罪を背負う気持ち、自己再生などが描かれていると思いました。
映画.comの短評によると、カンヌ国際映画祭で本作が脚本賞を受賞したとき、かなり落胆した海外の批評家の姿があったそうです。
それは、この作品のシナリオが悪いという意味では無く、もっと大きな賞を受賞するのを期待していたからだそうです。
つまり、本作はもしかするとパルムドールを獲れていたかもしれない。
それくらい高い評価を受けた映画と言えます。
北野武監督にも言えることなのですが、海外で評価が高い監督は逆に国内ではウケが悪い傾向にあります。
本作に否定的だったレビューを拝読させていただきました。
「つまらない、退屈」。
「拷問」。
「意味が分からない」。
「なぜ、これがアカデミー賞?」。
「露骨なわいせつなセリフが気持ち悪い」などなど。
あくまで自分の感想ですが、『おくりびと』に比べると感動的な映画ではありませんし、万人向けな作りもしていないと思います。
同じ”ドラ”でも「『ドラえもん』を観れば良かった」という意見もありましたが、「ドラえもん」よりは難解だと思います。(笑)
ですが、カンヌ国際映画祭で賞を受賞したシナリオのすばらしさ。
言葉ひとつひとつが丁寧に、そして心の中まで響くものになっているのは「凄い」と感じました。
突然妻に先立たれてしまった家福(西島秀俊)。
2年経っても、その心の傷は癒えず、いつも妻の残した声の入った舞台のセリフのカセットテープを車中で聴いている。
妻の語る言葉を大切にしている家福の姿が感じられました。
また、家福が演出をする舞台「ワーニャ叔父さん」を日本語だけでなく、韓国語、中国語など多国語にしているところも、本作が言葉の持つ重さや、言葉の違いという壁の存在を否定し、気持ちは通じ合えることを映し出していたように思いました。
出演者も国際色豊かです。
当然初めて知る俳優さんが多かったのですが、皆さん、いい演技を披露していたと思います。
瀬戸内海のロケーションの美しさが際立っていたと思いました。
まさに絶景です。
登場人物たちが何を求めているのか?
どこへ向かって歩んでいこうとしているのか?
それが分からないだけに、この美しい車内から見える景色はある意味、癒やしのように感じました。
救われなかった気持ち。
救えたはずの気持ち。
救われた気持ち。
それらを乗せて自動車は走り続けます。
チェーホフの「ワーニャ叔父さん」を知っていれば、この映画の良さがもっと分かったかもしれないと思うと、予習しておくべきだったな~と思ってしまいました。
岡田将生さんのイケメンぶりはハリウッドでも話題になったそうですね。
アカデミー賞授賞式でもいろんな方に声を掛けられたそうです。
濱口監督もスピルバーグに直に褒めてもらったそうで、「何か、凄いな~」と思ってしまいました。
長い、明確な答えを提示しないなど、日本映画らしからぬ作りになっているので嫌いな人が多いのもうなずける映画です。
自分は劇中の舞台のラストシーン、手話で語られる言葉が感動的で胸が熱くなりました。
人はギアをバックに入れず、憎しみも悲しみも喜びも乗せて、常に前へ走らなければならない。
後ろには何も無いのですから・・・。
カンヌ国際映画祭、アカデミー賞受賞文句なしの大傑作だと思いました。