One today is worth two tomorrow.

当ブログへ起しいただき、心から感謝いたします。映画の感想やスポーツ観戦の記事、写真中心のブログです。

『きみの瞳が問いかけている』

『きみの瞳(め)が問いかけている』

 

2020年製作/日本映画/上映時間:123分/G/2020年10月23日日本公開

 

監督:三木孝浩

出演:吉高由里子

   横浜流星

   やべきょうすけ ほか

 

チャールズ・チャップリンの『街の灯』にインスパイアされた2011年の韓国映画『ただ君だけ』を原作にしたラブロマンスです。

視力を失った女性と夢に破れた青年の恋が描かれます。

 

あらすじ

 

29歳の明香里(吉高由里子)は、思いがけない事故で視力と家族を失うが、明るく過ごしていた。ある日彼女が、管理人と間違えて塁(横浜流星)という青年に話し掛けたのをきっかけに、二人は会話を重ねるようになる。キックボクサーだった塁は、ある事件が原因で心を閉ざしており、笑顔を向けてくれる明香里は大事な存在だった。やがて自分の過去が彼女の失明と関係していたことを知った彼は、高額な手術代を稼ごうと賭博試合のリングに立つことを決意する。

シネマトゥデイより)

 

チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』にインスパイアされて製作された韓国映画『ただ君だけ』を、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の三木孝浩監督のメガホンでリメイクしたラブロマンスです。

ユリゴコロ』などの吉高由里子、『兄友』シリーズなどの横浜流星が主演を務めております。

 

BDにて鑑賞。

初めての鑑賞になります。

 

順番的には日本映画かな?と思ったのですが、dTVでは「これは観たい」と思う作品があまりなく決め手に欠いておりましたので、寝かせておいたBDから選びました。

三木孝浩監督の作品は好きです。

 

不慮の事故で視力と家族を失った明香里は、小さな楽しみを糧に毎日を明るく生きていた。ある日、明香里は管理人の男性と間違えて塁という青年に話しかけてしまう。彼はかつてキックボクサーとして将来を有望視されていたが、ある事件をきっかけに心を閉ざし、現在は日雇いのアルバイトで食いつなぐ日々を送っていた。

 

その後も時々やって来ては屈託なく話しかけてくる明香里に、塁は次第に心を開いていく。やがて塁は自分の過去が明香里の失明した事件と接点があったことを知り、彼女の目の手術代を稼ぐため、不法な賭博試合のリングに立つことを決意する・・・。

 

も、もの凄くベタなお話しです。

ここまでベタですと、普通はシラけてしまうのですが、なぜか心地良い。

これが三木孝浩監督の持ち味のような気がいたします。

 

元ネタはチャップリンの名作『街の灯』。

この名作を上手に現代風にアップデートしたと思います。

 

『街の灯』とまったく違うところは、盲目の女性を愛し、彼女のことを思いやる男性がイケメンになっているところ。

おそらくオリジナル版の韓国映画もそうだと思います。

 

全体的にはいい感じのラブロマンスなのですが、細かいところに目をやるとツッコミどころ満載です。

吉高由里子さん演じる明香里は、いつも駐車場の事務所の管理人のおじいさんのところへ来て一緒にテレビドラマを観る(目が見えないのでセリフを聴くというのが正しいのかな?)習慣があり、そのおじいさんが夜逃げしてしまった代わりに横浜さん演じる塁が後釜になるのが出会いのきっかけですが、なぜ明香里はおじいさんといつも一緒にいたのか分かりません。

おじいさんの姿・カタチがまったく映画に映し出されないのが余計気になってしまいました。

 

視覚障害者が、あのような急階段のあるアパートに住むというのも不自然。

 

そして塁が、裏社会の人間を敵にして、車に跳ねられナイフで刺されます。

当然死んだと思っていたら、生きていた塁。

のんびり病院のベッドで寝ている場合では無いと思います。

生きていると知られたら、どこまでも裏社会の人間は追ってくると思うのですが・・・。

 

序盤、「目が見えない分、嗅覚に優れている」という明香里。

病院のマッサージ師になって、偶然塁と出会わせます。

そこでリハビリするとき、嗅覚で気づく・・・のかと思ったらそうでは無い。

 

その後、陶芸家としても成功し、自分のお店を持つ明香里のところへ塁が訪ねます。

明香里不在で、二人の思い出の花を買って帰る塁。

その帰り道、二人で飼ったワンちゃんが塁の存在に気づき追いかけてきますが、明香里はまだ気づかず。

 

すぐに気づいてしまったら面白味が欠けてしまいます。

ですが、じらし過ぎるのもイライラしてしまいます。

本作は後者の方ですね。

 

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、お金も無く松葉杖の塁がどうやってあの思い出の場所に瞬時に行けたのも謎です。

 

ですが、三木孝浩監督らしさ全開の美しいラブロマンスに仕上がっていたと思いました。

映像、出演者ともに光っていたと思います。

 

また、「愛」だけでなく「赦し」を描いた作品のようにも感じました。

母親の無理心中で死ねなかった塁。

犯罪に手を染め、懲役刑になり、そして人を愛してしまう。

どうすればいいのか、育った孤児院(で、いいのかな?)のシスターのところへ訪ねに行きます。

シスターは言います。「あんたを嫌っているのはあんただけ。過去は変えられない。前を向いて生きていきなさい」と。

シスターを演じる風吹ジュンさん、すばらしい演技でした。

 

『街の灯』の時代とはかけ離れ、現在は障害者の医療費も優遇されていると思います。

ケータイも物語の邪魔になりますし、いっそ時代設定を少し昔にすれば、もっと良かったように思いました。

 

明香里のセリフ「傷ついたことのある人は、必ず優しくなれる」。

このセリフに胸が熱くなりました。

正直、自分も自分という人間が大嫌いです。

ですが、他人に対しては優しくありたいと思わせる。

そのような温かさを持った映画だと思いました。

 

ツッコミどころはありますが、ぜひオススメしたいと思える1本です。

吉高由里子さんの演技も良かったです。