『ブラック・ウィドウ』
原題:Black Widow
2021年製作/アメリカ映画/上映時間:134分/G/2021年7月8日日本公開
監督:ケイト・ショートランド
出演:スカーレット・ヨハンソン
フローレンス・ピュー
レイチェル・ワイズ ほか
『アベンジャーズ』シリーズをはじめとしたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の各作品で活躍した、スカーレット・ヨハンソン演じるブラック・ウィドウが単独で主役を務めたアクション映画です。
超人的な身体能力と、類いまれな美貌を持つヒロインの秘密をひもとかれます。
あらすじ
孤高の暗殺者ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)の前に、ある日突然「妹」のエレーナ(フローレンス・ピュー)が現れる。二人は自分たちを暗殺者に仕立て上げたスパイ組織レッドルームの秘密を知ってしまったため、組織から命を狙われていた。姉妹が頼れるのは、かつて組織によって作られた偽りの家族しかなかったが、レッドルームの陰謀はこの「家族」の再会に仕組まれていた。
(シネマトゥデイより)
すご腕の暗殺者で世界最高のスパイ、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの活躍を描いたアクション映画です。
主演はもちろんスカーレット・ヨハンソン。
妹のエレーナを『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたフローレンス・ピューが演じております。
共演はオスカー女優のレイチェル・ワイズ、デヴィッド・ハーパー、ウィリアム・ハートら。
Disney+にて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
MCU作品、少したまってきて、来月1日から『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』の配信も決まりましたので、「そろそろ観ないと」と思い、まず本作から鑑賞いたしました。(次いで『スパイダーマン~』、『ドクター・ストレンジ~』と観れたらと思っております)
ブラック・ウィドウの前に突如現れた“妹”エレーナ。姉妹は、自分たちを暗殺者に育てたスパイ組織レッドルームの秘密を知ったことで命を狙われる。
唯一の味方は、かつて組織が生み出した“偽りの家族”だけ。だが、この家族の再会によって、レッドルームの恐るべき陰謀が動きだす!ブラック・ウィドウの作られた過去との戦いが、世界の命運を握る・・・。
※本作のネタバレはできるだけ控えますが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレが含まれる記事になります。この2作品をこれから初めての鑑賞される方はご注意を。※
『インフィニティ・ウォー』以前、アベンジャーズの紅一点だったブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの活躍を描いた作品です。
物語の時代設定がアベンジャーズ分裂のきっかけになった『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』と『インフィニティ・ウォー』の間になっております。
近年、論争になっているMCU作品に対する映画人の対応。
まず、事の発端になったのが2019年10月に・・・
私の尊敬する映画監督のマーティン・スコセッシの発言。
MCU作品に対し、「あれは映画ではない。なにか別のものだ」と断言。「我々はあれに侵略されてはならない。映画館は気骨を見せて、ストーリーのある映画を見せるべきだ」と訴え、更に「映画館がアミューズメントパーク化してしまった。それ自体は構わないが、他の種類の映画すべてを侵略するのはやめてほしい。そういった映画を楽しむ人にはいいだろうし、そういう映画を作る人々は尊敬する。だが、自分の好みではない。単純に違う。あの手の映画は、あれを映画だと勘違いするような別の種類の観客を生み出してしまっている」と発言。
その意見に追随するかのように、フランシス・フォード・コッポラ監督も「見下げた作品」と批判。
リドリー・スコット監督も「スーパーヒーロー映画は退屈」と発言。(『プロメテウス
』、『エイリアン コヴェナント』も退屈でしたが・・・)
これらの意見に対し、当然MCU作品に出演した俳優は反論。
まず、アイアンマンことトニー・スタークを演じたロバート・ダウニー・Jrは「スコセッシ監督の意見には感謝するよ。何事においても、いろんな見方をする人の意見を聞くことは重要だと思う。そうすることで、議論を集めて前進することができるからね」と冷静な意見を述べたうえで、マーベル映画は「シネマではない」とする意見は「意味をなしてない」とコメント。
ニック・フューリー役、サミュエル・L・ジャクソンは「映画は映画。誰もがマーティンの映画を好きだというわけでもないし、それぞれに意見があっていいと思う。それで誰かが映画作りをやめるきっかけにもならないし」と、一歩身を引きつつもはっきりとした意見を述べ、ナタリー・ポートマン、ベネディクト・カンバーバッチらもスコセッシの意見に反論を述べております。
ここからはわたくしのど~しようも無い意見ですが、Disneyの商業戦略には疑問を感じることが多いですが(Disney+に加入している私が言うのもヘンですが)、MCU作品が「映画では無い」とは思ったことはありません。
映画とは「良い」、「悪い」と言うより、「好き」、「嫌い」という感想や意見が適格なように思っております。
スコセッシ、コッポラの重厚な映画に比べ、MCU作品は軽い感じに思えます。
しかし、スコセッシ、コッポラの暴力的な映画を嫌う人がいるのも事実です。
双方の意見が出たあとに、マーベルコミックを愛する映画監督のクエンティン・タランティーノの意見が出ました。
自分は、このタランティーノの意見が一番的を得ているように思いました。
「マーベル映画だけが製作されているように見える」と否定的意見のあと、「近頃は本物の映画スターが少なくなった。マーベルキャラクターを演じて有名になった俳優は多いけど、彼らは映画スターじゃないだろ?キャプテン・アメリカやソーがスターなだけ」とコメント。
本作主演のスカーレット・ヨハンソンは正真正銘の映画スターです。
ですが、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワースは申し訳無い言い方ですが、違うと思います。
スカーレットはナターシャ以外を演じた映画でも「観たい」と思わせてくれますが、エヴァンスらのキャプテン・アメリカ、ソー以外の映画は観る気が起きません。
タランティーノの言う通り、演じたキャラクターがスターなのです。
考古学者、インディアナ・ジョーンズ博士の活躍を観に劇場へ足を運ぶ人もいれば、スーパースターのハリソン・フォードを観たくてチケットを買う人もいるでしょう。
それとはまったく違います。
映画の好みは十人十色。
お好きな映画を楽しむのがベストだと思います。
ただ、全米の劇場をほとんどMCU作品が占拠し、低予算の秀作映画の上映の機会を奪っているのにスコセッシやコッポラは危惧しているのだと思います。
それも事実なのですが、映画館も営利目的で商売しているので、こればかりは・・・とも思ってしまいます。
これまた、ど~でもいいことですが、DCにもMCU作品にもまだ出演していない、本物のスーパースターのトム・クルーズ、レオナルド・ディカプリオの今後の動向は少し気になります。(おそらくどちらにも出演しないと思いますが)
スコセッシもコッポラも、近年の日本の少女コミック原作の映画(すべてではありませんが)を観たら、MCU作品への意見を訂正すると思います。
本当に酷い産業廃棄物以下のゴミ映画(「映画とは言えない」)は太平洋の彼方の島国に存在いたします。
自分は『ゴッドファーザー』、『タクシードライバー』大好きで10回以上観ております。
でも、MCU作品も大好きな作品があります。
本作もその1本と言っていい、とても面白い映画だと思いました。
MCU作品、DCの『ワンダーウーマン』も含め、女性戦士が主人公のアメコミ作品はナターシャが3人目だと思いますが、超人では無く生身の人間と言うところが本作の面白さであり、魅力だと思いました。
これまで語られなかったナターシャの過去。
家族との生活や、なぜ彼女がアベンジャーズのメンバーにまで成長したのかが明らかになります。
妹のエレーナを演じたフローレンス・ピューも印象に残る演技を披露しておりました。
ますます勇気を出して『ミッドサマー』観なくては・・・。
どちらかと言うとハードな展開の多い中、ユーモラスなキャラクターとして登場するお父さんのレッド・ガーディアン。
キャプテン・アメリカに対抗意識満々の面白いキャラでした。
戦闘する相手の動きを完コピできるタスクマスター。
マスクを外したら意外な方が演じていて、少し驚きました。
そして、2022年3月13日に他界されたウィリアム・ハート、最後のMCU作品になってしまいました。
ハートの演じたようなキャラクターがあってこそ、MCU作品に深みが出たように感じます。
とても残念です。
ご冥福をお祈りいたします。
少し唐突に感じた『エンドゲーム』でのナターシャの死。
そのモヤモヤが少し本作を観たことで晴れた感じがいたしました。
一切弱音を吐かず、気丈な振る舞いをしていた彼女の根底に存在するものとは何か?
タフで勇敢な女性として描かれてきたナターシャの人間としての弱さ。
そのようなものが描かれたことにより、ヒーロー映画というジャンルを超え、ドラマ性の高い映画に仕上がっていたと思いました。
MCU作品恒例のエンドクレジット後の「○○は△△で帰ってくる」というテロップは当然登場しませんでした。
これがナターシャの最後の活躍と思うと感慨深いものがあります。
スカーレット・ヨハンソンに「本当にありがとう」と言いたいです!