『荒野の誓い』
原題:Hostiles
2017年製作/アメリカ映画/上映時間:135分/G/2019年9月6日日本公開
監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベイル
ウェス・スチューディ ほか
19世紀末のアメリカを舞台に、かつて戦った先住民の首長たちを護送する騎兵大尉を描いた西部劇です。
『バイス』などのクリスチャン・ベイルが主人公を演じ、『ゴーン・ガール』などのロザムンド・パイク、『アバター』のウェス・ステューディらが共演。
『クレイジー・ハート』のスコット・クーパーが監督を務めております。
あらすじ
1892年、インディアン戦争の英雄で現在は刑務所の看守を務める騎兵大尉のジョー(クリスチャン・ベイル)は、かつての敵で余命わずかなシャイアン族の長イエロー・ホーク(ウェス・ステューディ)とその家族を居留地まで送る任務に就く。道中コマンチ族に家族を惨殺されたロザリー(ロザムンド・パイク)も加わり共に目的地を目指すが、襲撃が相次ぎイエロー・ホークと手を組まなければならなくなる。
(シネマトゥデイより)
『ファーナス 訣別の朝』でもタッグを組んだクリスチャン・ベイルとスコット・クーパー監督による、産業革命後の開拓地を舞台にした西部劇です。
『スポットライト 世紀のスクープ』などのマサノブ・タカヤナギが撮影を担当しております。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
期間限定、レンタル¥100の中に本作があり、映画館での予告編を観て気になっていたので、近年なかなか西部劇を観る機会が無いこともあり、レンタルいたしました。
昨年12月中旬にレンタル。
レンタル期間が約30日間だったので、ベイルのお誕生日の今月30日まで寝かせられませんでした。
1892年アメリカ。産業革命によって辺境の地が急速に開拓地や街へと変貌を 遂げつつあるニューメキシコ州。インディアン戦争の英雄で、現在は看守を務める騎兵大尉のジョー・ブロッカーは、かつて宿敵関係に あり、寿命僅かなシャイアン族の首長イエロー・ホークと その家族を、部族の所有地があるモンタナ州へ護送する任務に就く。
道中にコマンチ族の殺戮により家族を失ったトラウマを持つロザリー・クウェイドと出会い、彼女もこの一触即発の旅に加わることになります。
一行は厳しい辺 境地をなんとか乗り越え、1,000マイルほど移動した頃、遂にお互いの協力なしでは生きていけない状況に陥ってしまう。果たして彼らは敵意と恐怖心を押し殺し、手を取り合い、目的地まで辿り着くことができるのか・・・。
観ていてビックリしたのが、ティモシー・シャラメが出演していたこと。
予告編にも名前が出ていなかったので、出演しているとまったく知らなかったので驚きました。
しかし、更に驚くべきことに、登場してアッと言う間に殉職。
出演シーンは3~5分程度。セリフは3つくらいと本当に小さな役でした。
本作製作の2017年と同じ年に『君の名前で僕を呼んで』、『レディ・バード』が製作されているので、まだ知名度低い時代の出演作品だったと言えます。
ベイルは彼との共演、覚えているのか気になります。
それ以上に、ベイルは山田隆夫という人を覚えているかの方がもっと気になります。
超タカ派のジョン・ウェインが活躍していた時代の西部劇で、必ずと言っていいほど”悪役”の”人殺し”として描かれていたネイティブ・アメリカン(先住民)。
彼らの見解を大きく変えさせた作品と言うと、1990年のケヴィン・コスナー監督&主演のアカデミー賞作品賞受賞作『ダンス・ウィズ・ウルブズ』だと思います。
本作も白人とネイティブ・アメリカンという異人種でも分かり合えることはできるというテーマが描かれております。
『ダンス~』ですでに描かれたものを、この2017年に作ることにいろんな意味があるように思いました。
ベイル演じる大尉は多くのネイティブ・アメリカンを虐殺したことで”英雄”として扱われております。
その彼の最後の任務として、不知の病に冒されたいにしえの宿敵でもあるシャイアン族の首長イエロー・ホークを居住地へ無事に送り返すという大統領の命が伝えられます。
かつての敵だった人間を送る任務に不満を持ちながら、大統領の命ということもあり、それを実行する大尉。
しかし、予想以上にその任務は熾烈を極めます。
道中、コマンチ族に家族を皆殺しにされた女性と出会い、彼女も同行。
シャイアン族にとっても、コマンチ族は宿敵であります。
敵の敵は味方・・・とばかりにシャイアン族の首長の協力の申し出を一回は拒否する大尉。
しかし、コマンチ族の襲撃は凄まじいものがあり、多くの部下が殺されてしまいます。(ここでシャラメくん退場)
首長の協力を承諾することにより、大尉の中にあるヘイトな気持ちは変化をもたらしていきます。
本作は一見古臭いような西部劇のように思えますが、トランプ政権下に作られた、とてもすばらしい人間ドラマと言えると思います。
少し残念に思ったところは、本作はハリウッド映画としては低予算だと思うのですが、夜間シーンが意外と多いのですが、あまりに画面が暗すぎて何が映っているのか分からないところがかなりありました。
大統領の命だろうが「知ったこっちゃねぇ」と悪事を働く悪者。
やはり悪者はこれくらいじゃないとインパクト無いですね。
それに比べると日本の時代劇の悪者は印籠見て頭下げちゃうところは正直弱い。
強い信念を持った女性が描かれている西部劇なので、女性の方がご覧になられても好感を得られるのではないかと思いました。
もちろん戦争を描いているので、暴力シーンがあるので苦手な方にはオススメできませんが・・・。
原題のHostilesは「敵意」という意味だそうです。
それが、なぜこんなヘンテコ邦題になったかは謎ですが、冒頭のイギリスの小説家、D・H・ロレンスの「アメリカの本質は人殺し」という言葉が示すかのように、映画は復讐の連鎖、家族を殺されたものは、殺した者を抹殺する。
その繰り返しは何を生み出すのでしょうか?
異なる人種、文化の人間が分かり合うことの難しさ。
映画は今から100年以上前の物語ですが、このテーマは現代にも通じると思います。
とても難しいことではありますが、この作品はひとつの道しるべを提示したように感じました。
ベイルの役作りの凄さは本作でも発揮され、シャイアン族の言葉を勉強し、劇中シャイアン族との会話シーンはシャイアン語で話しておりました。
ラストシーンは賛否分れると思いますが、自分は気に入っております。
ネイティブ・アメリカンを抹殺したことで英雄になった男が、彼らによって教えられ、心情に変化が芽生える。
このような描写もハリウッド映画特有の長旅でいがみ合っていた者に友情が生まれると言ったロードムービー的な良さも取り入れられていたと思いました。