『この世界に残されて』
原題:Akik maradtak
2019年製作/ハンガリー映画/上映時間:88分/G/2020年12月18日日本公開
監督:バルナバーシュ・トート
出演:カーロイ・ハイデュク
アビゲール・スーケ
マリ・ナジ ほか
第二次世界大戦後、ソ連の影響下にあったハンガリーを舞台に描く人間ドラマです。
ナチスドイツにより約56万人ものユダヤ人が虐殺されたと言われるハンガリーを舞台に、ホロコーストで心に深い傷を負った孤独な男女が年齢差を超えた心の交流が映し出されます。
あらすじ
1948年、16歳のユダヤ人の少女クララ(アビゲール・スーケ)は、家族の中で一人だけホロコーストを生き延びた。天涯孤独の身となった彼女はある日、物静かな医師のアルド(カーロイ・ハイデュク)と出会い、話をするうちに少しずつ彼に心を開いていく。やがてクララはアルドを父親のように慕うようになり、彼もまた少女を庇護することで心の平安を得る。
終戦後の1948年。ホロコーストにより心に傷を負った孤独な男女が、年齢差を超えて痛みを分かち合い、互いに寄り添いながら希望を見いだしていく姿を描くハンガリー映画です。
アビゲール・スーケが主人公を演じ、『ハンガリー連続殺人鬼』などのカーロイ・ハイデュクが医師にふんしております。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
ヴァレンタイン・デーということと、上映時間がお手ごろという理由から本作を選びました。
ナチス・ドイツによって約56万人ものユダヤ人が殺害されたと言われるハンガリー。終戦後の1948年、ホロコーストを生き延びたものの、家族を喪い孤独の身となった16歳の少女クララは、ある日寡黙な医師アルドと出会う。
言葉をかわすうちに、彼の心に自分と同じ欠落を感じ取ったクララは父を慕うようにアルドになつき、アルドはクララを保護することで人生を再び取り戻そうとする。
彼もまた、ホロコーストの犠牲者だったのだ。 だが、ソ連がハンガリーで権力を掌握すると、世間は彼らに対してスキャンダラスな誤解を抱き、やがて二人の関係も時の流れとともに移り変わってゆく・・・。
邦題だけ見ると、某アニメーション映画を思い出してしまいますが、本作も世界の片隅に生きる戦争によって家族を失ってしまった”残された者”(←原題)を映し出した作品です。
主演のアビゲール・スーケが美しく、ステキでした。
手元にデータが無く、実際の年齢は分からず、出演した作品で日本公開された作品も本作だけですが、地元ハンガリーでは人気があるのではと思いました。
なかなか所長(←あえて違う漢字を当てております)が来ないことで病院で診察を受ける主人公・クララ。
そこでホロコーストで家族を失った医師・アルドと出会います。
お互い、家族を戦争で失ってしまった喪失感を抱える二人。
アルドがクララに質問するとき、「ご両親は○○だった?」とつい過去形で訊いてしまいます。
それに対しクララが「だった?両親はまだ生きている。敵に捕まっているだけ」と強がる姿が切なさを感じます。
彼女も当然理解しているはずです。
ですが、それを認めたくない。
そこに、この映画のタイトルの”残された者”の哀しさが映し出されます。
気丈に振る舞っていたクララでしたが、同じ悲しみを持つアルドに対し、つい弱音を吐いてしまう・・・。
お互いが家族を亡くした悲しみから、その孤独感をうめるかのように距離を縮めていく二人。
やがて、父と娘のようなプラトニックな関係へと発展していきます。
この作品を観て、キューブリックの『ロリータ』を思い出しました。
キューブリックの『ロリータ』が製作された時代は年の差カップルの性描写などご法度の時代だったので(原作ではあったみたいですが)、映画だけで観ると本当にプラトニックで切ない恋愛映画になっておりました。
本作も42歳の医師と16歳の少女という歳が離れた男女の愛が映されます。
しかし、それはとても自然な成り行きで、「お互い傷を舐め合わなければ生きていけない」姿として描かれております。
映画情報サイト、映画.comで『レオン』がお好きな方にオススメと書いてありました。
なるほど、『レオン』のジャン・レノとナタリー・ポートマンも似たような関係と思えます。
激動のハンガリーを舞台に普通に生きることの難しさや大切さと描いた佳作だと思いました。
娯楽性はありませんが、生きることの歓びが伝わる映画でした。
個人的にはオススメです。