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『ベルファスト』

ベルファスト

原題:Belfast

 

2021年製作/イギリス映画/上映時間:98分/G/2022年3月25日日本公開

 

監督:ケネス・ブラナー

出演:カトリーナ・バルフ

   ジュディ・デンチ

   ジェイミー・ドーナン ほか

 

俳優・監督・演出家など多岐にわたって活動するケネス・ブラナーの幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品です。

出身地である北アイルランドベルファストを舞台に、激動の時代に翻弄されるベルファストの様子や、困難の中で大人になっていく少年の成長などを、力強いモノクロの映像で映し出されます。

2022年・第94回アカデミー賞において作品賞、監督賞など計6部門にノミネートされ、最優秀脚本賞ケネス・ブラナー)を受賞。

 

あらすじ

 

北アイルランドベルファストに暮らす9歳の少年バディ(ジュード・ヒル)は、仲の良い家族と友人たちに囲まれ、映画や音楽を楽しむ幸せな日々を過ごしていた。しかし1969年8月15日、プロテスタント武装集団がカトリック住民を攻撃したことで、彼の穏やかな日常は一変。住民同士が顔なじみで一つの家族のようだったベルファストの街は、この暴動を境に分断されてしまう。住民の間の対立が激化し、暴力と隣り合わせの日々を送る中、バディの家族は故郷を離れるべきか否か苦悩する

シネマトゥデイより)

 

俳優・監督・演出家として活動するケネス・ブラナーの半自伝的ドラマです。

北アイルランドベルファストを舞台に、9歳の少年を取り巻く日常と、激動の時代に翻弄(ほんろう)される故郷の姿が描かれます。

 

Amazonプライムビデオにて鑑賞。

初めての鑑賞になります。

 

アカデミー賞作品賞ノミネート、先日発表された2022年・第96回キネマ旬報外国映画ベストテンでも7位にランクインされ、期待値あげての鑑賞でした。

 

ベルファストで生まれ育ったバディは家族と友達に囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごす9歳の少年。笑顔にあふれ、たくさんの愛に包まれる日常は彼にとって完ぺきな世界だった。

 

しかし、1969年8月15日、バディの穏やかな世界は突然の暴動により悪夢へと変わってしまう。プロテスタント武装集団が、街のカトリック住民への攻撃を始めたのだ。

住民すべてが顔なじみで、まるで 一つの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々のなか、 バディと家族たちは故郷を離れるか否かの決断に迫られる・・・。

 

俳優、映画監督として活躍するケネス・ブラナーの少年時代過ごした町、ベルファストを舞台に美しいモノクロ映像で綴られる激動の時代を少年の視線で描いた作品でした。

 

どうでも言い話しなのですが、この”ベルファスト”という町、本作を知るかなり前から知っている気がしていたのですが、富野由悠季監督の名作「機動戦士ガンダム」に登場しておりました。

西暦から宇宙世紀に変わっても、ジオンのコロニー落としが起こっても残り続けた町。

ケネス・ブラナーも一安心ではないでしょうか?

(現実とアニメを一緒にしてはいけない)

 

偶然にも本作の日本公開の約1ヶ月前の2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってしまいました。

静かで穏やかに過ごしていたウクライナの人たちに突如襲った恐怖。

本作でも同じようなものが描かれております。

 

アイルランドでのキリスト教プロテスタントカトリックとの反目から、それがやがて暴動へと発展したという話しは聞いたことがありますが、ここまで過激なものだとは思いませんでした。

 

1969年8月から始まったこの暴動は1998年に和平合意に至るまで、約3,600人の死者を出してしまったそうです。

その「北アイルランド紛争」を少年時代のケネス・ブラナーは目の当たりにしてしまうことになります。

 

・・・ですが、これが湿っぽい話しになっておらず、少年バディは大好きなこの町で元気いっぱい生きている姿が描かれます。

好きな女の子の隣の席に座りたいという気持ちや、お気に入りのコミックを読む姿はいかにも子どもらしくて良かったです。(読んでいたコミックが「ソー」だったのは楽屋オチ?)

 

おじいちゃんもおばあちゃんも大好き。

みんな優しくて笑顔でバディと接してくれます。

 

週末にはお父さん、お母さん、お兄ちゃんと映画鑑賞。

大好きな人たち、そして大好きな町に住む歓び。

やがて、それが奪われてしまう日が来てしまいます・・・。

 

これまで笑顔で話し合っていた隣人が敵対することになり、暴力というものと常に一緒に生活していた彼ら一家はこの町を出る決意をすることになります。

 

愛する町との別れ。

大好きだった女の子ともサヨナラを言わなくてはならなくなりました。

不条理は暴力は幼い少年から大切なものをたくさん奪ってしまいます。

 

それでもバディは涙を見せず、うつむくことも無く町を離れます。

 

監督、ケネス・ブラナーの伝えたかったメッセージはここにあったような気がいたしました。

暴力によって悲しみ、下を向くことは簡単。

しかし、それでは前へ進むことができない。

ジュディ・デンチ演じるおばあちゃんは町に残るのですが、バディに「行きなさい、後ろを振りかえらず」と言うシーンは胸が熱くなりました。

 

キリスト教圏でない日本では、なぜここまでプロテスタントカトリックとの反目し合うのかが分かりづらいところがあると思います。

それを気にしないのであれば、たくさんの勇気をもらえる秀作だと思いました。