『西部戦線異状なし』
原題:Im Westen nichts Neues
2022年製作/ドイツ映画/上映時間:148分/日本劇場未公開作品
監督:エドワード・ベルガー
出演:フェリックス・カメラー
アルブレヒト・シュッフ
ダニエル・ブリュール ほか
アカデミー賞を受賞した1930年のルイス・マイルストン監督による映画版でも広く知られる、ドイツの作家エリッヒ・マリア・レマルクの長編小説「西部戦線異状なし」を、原作の母国ドイツであらためて映画化した戦争ドラマです。
第1次世界大戦の西部戦線で、ドイツ軍兵士パウルは仲間たちと共に戦う中で、想像もしなかった絶望と恐怖に落ちていく姿が描かれます。
本年度・第95回アカデミー賞において、作品賞、脚色賞、国際長編映画賞など計9部門にノミネート。(発表は日本時間今月13日)
あらすじ
第1次世界大戦下のヨーロッパ。ドイツ軍に志願した17歳のパウルや仲間たちは、西部戦線で戦う部隊に配属される。最初は祖国のために戦おうと強い志を抱いていたパウルたちだったが、凄惨(せいさん)な戦場を目の当たりにし、戦意を失っていく。
(シネマトゥデイより)
意気揚々と出兵した17歳の若者が、戦場の現実を目の当たりにする戦争ドラマです。
出演はフェリックス・カマラーや『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』などのアルブレヒト・シュッフ、『ラッシュ/プライドと友情』などのダニエル・ブリュールなど。
・・・えっ~、お恥ずかしい話しですが、実は今月からNetflixに入会いたしました。
今契約すると、何と2ヶ月無料で視聴できるという大阪ガスとのキャンペーンで、ネット配信では無料お試し期間というものがほとんどありませんので、「これはお得だ」と思わず契約してしまいました。(汗)
そのNetflixの最初の鑑賞作品として、本年度アカデミー賞ノミネートのNetflix製作の本作を選ばせてもらいました。
第1次世界大戦下のヨーロッパ。17歳のドイツ兵パウルは、祖国のために戦おうと意気揚々と西部戦線へ赴く。
しかし、その高揚感と使命感は凄惨な現実を前に打ち砕かれる。ともに志願した仲間たちと最前線で命をかけて戦ううち、パウルは次第に絶望と恐怖に飲み込まれていく・・・。
まず映画の感想の前に、初めて加入したNetflixの感想を。
アメリカに本社を置く会社ですが、意外と日本映画が充実していると思いました。
Netflixは加入しないと、どんな作品を配信しているか分かりません。
自社製作のオスカー候補になった作品のほか、Amazonプライムビデオではまだ新作としてレンタル¥500してしまう日本映画(Amazonプライムビデオは一部日本映画がレンタル高い)がかなり多く観れるところとすべての作品見放題は嬉しかったです。
今回一番加入したい理由だったのが、現在劇場公開中の有村架純さん主演の『ちひろさん』(Netflix製作)が観れることだったのですが、本年度キネマ旬報日本映画ベストテン入りした『ハケンアニメ!』などもあり、かなり充実しておりました。
さらに嬉しかったのが、高評価を得ていて、自分は残念ながら未見だった京都アニメーションの「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の映像作品がすべて観れることです。
これは楽しみですね。
1930年にアメリカで製作され、アカデミー賞作品賞受賞した作品を皮切りに、1979年にアメリカとイギリス合作でリメイク。
本作は初めて原作の母国であるドイツで製作された3度目の映画化作品です。
ちなみに、どうでもいい余談ですが、織田裕二さん主演の『就職戦線異状なし』というタイトルはこの原作、または映画化された作品から来ております・・・多分。
織田裕二さんはこんなんばっかりですね。(『トップガン』のパクリの『ベスト・○イ』とか・・・)
1930年版は『プライベート・ライアン』に大きく影響を与えたそうです。
『プライベート・ライアン』や近年の『ダンケルク』、『1917 命をかけた伝令』のような戦場にいるかと思うようなリアルな描写な作品だと思いました。
祖国のため、敵国を倒そうと意気込んで戦場へ赴いた17歳の青年。
しかし、彼が目の当たりにしたものは恐怖と絶望しか存在しない戦場だった。
「メッセージ性が弱い」という否定的意見もありましたが、何かを伝えるというよりは”戦争とは何か”を映し出そうとしていた作品のように思いました。
全編地獄絵図の作品ですが、少しだけ和やかに思えるシーンが。
フランス人農家の庭に入り込み、ガチョウを盗み、仲間たちで美味しそうに食べるシーン。
戦場では温かく美味しい食事などありません。
それを食べて幸せそうな笑顔を見せるシーンだけ、この地獄から解放されたように思わせるものでした。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』などハリウッド映画でも活躍しているダニエル・ブリュール。
いつもながらの好演を見せてくれたと思います。
本作では出演のほか、製作総指揮も兼任しております。
「祖国の威信」。
「生き恥を晒すなら、名誉の戦死を」。
そのような言葉で、ある意味若者をたぶらかして、多くの命を奪う戦争という悪魔。
前回紹介いたしました『ザ・メニュー』同様、人間の持つ狂気を映し出した映画だと思います。
戦場に威信や名誉など存在いたしません。
あるのは無数に横たわる死体だけです。
戦場で散っていく命のほとんどが10代の若者。
その上に立つお偉いさんは安全なところから指示を出すだけ。
いつも温かい食事とワインを口にしながら・・・。
バッハの曲が実に効果的に使われておりました。
自分が戦場の最前線で苦しむような気持ちになる、戦争という地獄が人間の感覚を麻痺させてしまう恐ろしいものだと体感させる作りになっていたと言えます。
終盤の信じられない展開に胸が痛みました。
これまでの戦争映画はドイツは悪者として描かれることが多かったですが、そのドイツ側の視線から映し出したところは「戦場で死んでいい若者などいない」と思わせるものでした。
・・・ただ、アカデミー賞では国際長編映画賞は間違いないと思いますが、作品賞はちょっと厳しいかな?
『パラサイト 半地下の家族』、『ドライブ・マイ・カー』に次いで、外国語(英語以外)の作品から俳優が誰もノミネートされない悪しき(?)伝統は受け継がれてしまいました。
Netflix以外で観る方法が無いので、オススメは難しいですが、もし加入されるのであれば、観て損は無い力作だと思いました。