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『キル・チーム』

『キル・チーム』

原題:The Kill Team

 

2019年製作/アメリカ映画/上映時間:88分/PG12/2021年1月22日日本公開

 

監督:ダン・クラウス

出演:ナット・ウルフ

   アダム・ロング

   アレクサンダー・スカルスガルド ほか

 

アフガニスタンで実際に起きたアメリカ軍兵士による民間人殺害事件を基に、戦場の現実を描いたドラマです。

監督はアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『最期の祈り』などのダン・クラウス。

 

あらすじ

 

正義感と愛国心を胸にアフガニスタンに渡ったアンドリュー(ナット・ウルフ)は、爆死した上官の代わりに赴任してきたディークス軍曹(アレキサンダー・スカルスガルド)率いる部隊に所属することになる。歴戦の猛者として名高い彼に尊敬の念を抱くアンドリューだったが、ディークスが治安維持と称して証拠もなく民間人を殺害していた事実を知ってしまう。アンドリューが罪悪感に苦しむ様子に気付いたディークスは、彼の忠誠心に疑念を抱く。

シネマトゥデイより)

 

2009年に起きたアフガニスタンで米兵が一般市民を殺害していたという実話をベースにしたドラマです。

正義感と忠誠心のはざまで葛藤する主人公を『Death Noteデスノート』などのナット・ウルフ、彼の上官を『ターザン:REBORN』などのアレキサンダー・スカルスガルドが演じるほか、アダム・ロング、ロブ・モローらが出演。

 

Amazonプライムビデオにて鑑賞。

初めての鑑賞になります。

 

本日いっぱいで見放題終了とのことで、「戦争映画」ということで少し迷ったのですが、Amazonプライムビデオでしか観れないので、今回は本作を選びました。

 

正義感と愛国心に燃えアフガニスタンに渡ったアンドリュー。現地では地元住民を取り調べるばかりの退屈な日常が続いていた。だがある日、上官が地雷を踏んで爆死するのを目の当たりにして、自分のいる場所が常に死と隣り合わせであることを思い知る。

代わりに上官として赴任してきたのは、歴戦の猛者として名高いディークス軍曹だった。誇り高き軍人、力が支配する男たちの世界を体現するような彼に出会い、アンドリューの士気は高まっていく。しかし尊敬すべき軍人であるはずのディークスは、治安を守るためと称して証拠もなく民間人を殺害し続けていた。

 

その事実を知ってしまったアンドリューは、それでもなお捨てきれない軍人ディークスへの畏敬の念と良心の呵責に苛まれてゆく。一方、異変に気づいたディークスはアンドリューの忠誠心を疑い始める。事態が刻一刻と悪化していく中、アンドリューは最後の決断を迫られる・・・。

 

まるで自分が戦場にいるかのような息苦しさを感じる1時間30分。

恐怖と狂気に震えながらの鑑賞でした。

監督がドキュメンタリー映画を多く手がけていたこともあり、リアリティのある映画でした。

 

アメリカの軍人が民間人を殺害する映画は1986年のオリヴァー・ストーン監督の『プラトーン』、1989年のブライアン・デ・パルマ監督の『カジュアリティーズ』という傑作で描かれております。

この2作品は共にベトナム戦争を題材にしていて、ベトコン(ベトナム兵)と民間人の違いは明確なのですが、本作のアフガニスタンはかなり違います。

 

正義感と愛国心で出兵した主人公。

目の前で仲間の兵士が爆死したことで、「この国の奴らを皆殺しにして、火を放って焼き尽くしたい」と怒りをあらわにいたします。

 

序盤のシーンで仲間の兵士が「子どもを連れた男の乗った車がやってきた。これは問題ないと思い通したら、その車には大量の爆薬が搭載していやがった。あいつらはオレたちを殺すためなら子ども利用する」というセリフがあります。

クリント・イーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』(当ブログ2022年1月3日記事にしております)でも女性、子どもがロケットランチャーをアメリカ軍の戦車へ向けるシーンがありました。

この戦争は敵が武装しているのか?それとも本当にただの民間人なのか?という境目を判別するのが難しいものになっているところがベトナム戦争と違うと思いました。

 

もちろん戦場でも罪の無い民間人を殺害したとなれば、重ければ極刑も免れません。

しかし、その判断が難しいところがあるのも事実です。

「正しいことを行う」と内部告発するか?それとも周りに流されてしまうかの判断。

それは一歩間違えば、自分が味方に殺されてしまう可能性も秘めております。

 

印象に残る挿話として「良心の空砲」というものがあります。

これは、銃殺隊を例にあげ「怖気づく者のために、1丁の空砲を仕込む」というものです。

 

アレクサンダー・スカルスガルドがすばらしい演技を披露しておりました。

イケメンで冷血な軍曹を好演しておりました。

不謹慎かもしれませんが、彼が焼くステーキ(なんの肉かは謎)が妙に美味しそうに見えてしまいました。

 

軍曹は言い放ちます。

「誰が殺した(殺さなかったか)」という点ではなく「全員(チーム)で殺した」と・・・。

それは、もう戦場に足を踏み出した瞬間に人殺しの兵器になったと捉えられます。

 

戦場で兵士が行うことは殺戮です。

敵対する兵士を殺すことが仕事です。

ですが、民間人を殺せば”殺人罪”に問われます。

命を天秤で測る段階でここに正義というものは存在しないのではと思ってしまいました。

 

恐ろしく残酷なテーマの映画でしたが、しっかりとした作りで観て良かったと思っております。

アメリカ映画は自国の恥部を描くことができるところが凄いと思います。

日本映画じゃできないかな?