『NOPE/ノープ』
原題:Nope
2022年製作/アメリカ映画/上映時間:131分/G/2022年8月26日日本公開
監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ
キキ・パーマー
ブランドン・ペレア ほか
『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールが監督&脚本&製作を務めたサスペンススリラーです。
田舎町の上空に現れた謎の飛行物体をカメラに収めようと挑む兄妹が、思わぬ事態に直面します。
あらすじ
田舎町に暮らし、広大な牧場を経営する一家。家業を放って町に繰り出す妹にあきれる長男が父親と会話をしていると、突然空から異物が降り注ぎ、止んだときには父親は亡くなっていた。死の直前、父親が雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目にしていたと兄は妹に話し、彼らはその飛行物体の動画を公開しようと思いつく。撮影技術者に声を掛けてカメラに収めようとするが、想像もしていなかった事態が彼らに降りかかる。
(シネマトゥデイより)
『ゲット・アウト』、『アス』で高い評価を受けるジョーダン・ピールの長編監督第3作です。
『ゲット・アウト』でもピール監督と組んだダニエル・カルーヤ、『ハスラーズ』などのキキ・パーマー、『ミナリ』などのスティーヴン・ユァンのほか、マイケル・ウィンコット、ブランドン・ペレアらが出演。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
『ゲット・アウト』(本ブログ2021年11月24日記事にしております)の監督最新作ということで、結構楽しみにしておりました。
はたして結果は如何に・・・。
南カリフォルニア、ロサンゼルス近郊にある牧場。亡き父から、この牧場を受け継いだOJは、半年前の父の事故死をいまだに信じられずにいた。形式上は、飛行機の部品の落下による衝突死とされている。
しかし、そんな“最悪の奇跡”が起こり得るのだろうか?何より、OJはこの事故の際に一瞬目にした飛行物体を忘れられずにいた。
牧場の共同経営者である妹エメラルドはこの飛行物体を撮影して、“バズり動画”を世に放つことを思いつく。やがて起こる怪奇現象の連続。それらは真の“最悪の奇跡”の到来の序章に過ぎなかった・・・。
監督デビュー作『ゲット・アウト』で高い評価を受けたジョーダン・ピール。
その後の映画製作の姿を見ていると、どうしてもM・ナイト・シャマランに似た道を進んでいるように思います。
シャマランも『シックス・センス』で(ただ、この作品はシャマランのデビュー作ではありません)全世界の映画ファンに衝撃を与え、その後、映画ファンに失望を与え続け、『エアベンダー』(2010、野球のピッチャーの変化球ではありません)は映画史に残る駄作と評される始末・・・。
スピルバーグ同様、映画少年で子どもの頃からカメラをおもちゃのようにしていたシャマランと違い、コメディアン出身のジョーダン・ピール。
ただ、アカデミー賞のノミネートされた作品のあと、「何だ、これは?」と思わせて、蓋を開けてみると「・・・」というタイプの映画が続いているところは似ております。
本作はシャマランで言うところの『サイン』(2002)に近い感じです。
それと同時にスパイク・リーにも似たところもあり、ハッキリ言うと「白人差別主義者」とも思われるところが映画作りに表われていると思いました。
冒頭の1998年のテレビ番組収録のシーン。
番組のマスコットで主役といえるチンパンジーが誕生日のプレゼントの風船が割れる音に恐怖し、共演者を惨殺します。
このシーンにぶったまげ。
その後、テーブルの下に隠れていた韓国系の子役の男の子がチンパンジーに見つかります。
しかし、チンパンジーは彼を殺すことはせず、まるで某スピルバーグ作品のようなシーンが。
このシーンの意味する(と推測される)ことは、この時代のアジア系の人間は「イエロー・モンキー」とバカにされておりました。
・・・つまり、ピールが描きたかったことは、白人に虐げられていた人たちの仇をチンパンジー(モンキー)が取ったと言うことなのではと勝手に推測いたしました。
大人になったその子役を『ミナリ』のスティーヴン・ユァンが演じております。
その大人になった韓国人がこの本来なら恐怖体験として残っているはずが快感(喜び)になっていたという設定は、ジョーダン・ピールらしさ炸裂!
『AKIRA』を思われるシーンや、全体的にはスピルバーグの『未知との遭遇』的な映画なのですが、正直分かりやすいとは間違っても言えない映画で、予想通り賛否分れております。
吹き替え版で鑑賞した方が「妹がギャーギャーうるさかった」と評しておりましたが、それは字幕版で鑑賞したわたくしも同意見です。
この妹がうるさいし、お下品な言葉連発。
この兄妹と電器店のお兄ちゃんが何をしたいのか分からないという意見。
これは簡単だと思いました。
宇宙人(?)に殺された父親の仇討ち・・・などでは無く、未確認飛行物体の映像を「ネットでアップすればバズる」とハッキリ言っておりました。
むしろ、分からないのはこの宇宙船に乗った(生命体が乗っていたかも謎なのですが)ものの目的。
もの凄いド田舎で、人口も少ないところで少人数の人たちを殺めることに意味があるのか?
こちらが謎です。
おそらく・・・なのですが、この映画はジョーダン・ピールの映画への愛を描いたユニークなSFサスペンス映画なのかな~?とまたまた勝手に解釈。
先にあげたスピルバーグ作品や日本のアニメーション作品などからの影響がよく出ていた作品のように感じました。
クラゲのようになる飛行物体の姿が「新世紀エヴァンゲリオン」の使徒の姿にも似ているように思いました。
赤い液体(血液なのかな?)が降るシーンなども。
そこに監督お得意の人種差別への批判を取り入れた、どちらかというとシャマランと言うより、タランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』のジョーダン・ピール版と言った感じの映画です。
「NOPE」とは「無理」と言ったスラング的な意味があるそうです。
前日、「無理は禁句」というホテルマンの映画を観ていたのは偶然か?と思ってしまいました。(笑)
ほとんど推測で感想を書かせていただきましたが、チンパンジーに関することは間違いないと思っております。
Gパン、Gジャケという言葉は日本人が使う和製英語で、英語圏で「Gパン」などと言っても通じません。
劇中テロップで登場しますがジーンズ(Jeans)と言うのが正しいようです。
まさに「何じゃ、こりゃ~」と言いたくなる映画でしたが、自分は結構楽しめました。