『スポットライト 世紀のスクープ』
原題:Spotlight
2015年製作/アメリカ映画/上映時間:128分/G/2016年4月15日日本公開
監督:トム・マッカーシー
出演:マーク・ラファロ
レイチェル・マクアダムス ほか
アメリカの新聞「The Boston Globe」の記者たちが、カトリック教会の醜聞を暴いた実話を基に描くスリリングな社会派ドラマです。
2016年・第88回アカデミー賞において、作品、監督、助演男優賞(マーク・ラファロ)、助演女優賞(レイチェル・マクアダムス)など計6部門にノミネートされ、作品賞、脚本賞の2部門を受賞。
あらすじ
2002年、ウォルター(マイケル・キートン)やマイク(マーク・ラファロ)たちのチームは、「The Boston Globe」で連載コーナーを担当していた。ある日、彼らはこれまでうやむやにされてきた、神父による児童への性的虐待の真相について調査を開始する。カトリック教徒が多いボストンでは彼らの行為はタブーだったが……。
(シネマトゥデイより)
新聞記者たちがカトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を描いた社会派ドラマです。
カトリック系住民が多いボストンで、神父による児童への性的虐待事件を暴露した新聞記者らの困惑と共に、次々と明らかになる衝撃の真実を描き出します。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
2回目の鑑賞になります。
前回鑑賞もAmazonプライムビデオでした。
映画館で観たかったのですが、2016年4月にちょうど東京から神戸へ引っ越しを控えていて、泣く泣く断念いたしました。
今回なぜ本作を改めまして観直そうとしたのか?
この作品をご覧になられた方は、薄々気づいていると思いますが、最近ごく一部のマスメディアに取り上げられている日本の超・大手芸能事務所の話題との関連です。
2002年1月、米国の新聞「The Boston Globe」が、カトリック教会の信じがたい実態を報じた。数十人もの神父による性的虐待を、教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。
その許されざる罪は、なぜ長年黙殺されたのか。「SPOTLIGHT」という名の特集記事を担当する記者たちは、いかにして教会というタブーに切り込み、暗闇の中の真実を照らし出したのか・・・。
今回はあまり映画の感想を書けないかもしれません。
イギリス・BBCによる告発番組と、元所属タレントのカウアン・オカモト氏による告発会見から始まった故ジャニー喜多川氏による性加害疑惑を受けて、ジャニーズ事務所は社長の藤島ジュリーK氏が謝罪動画を公式サイトに掲載いたしました。
この動画によると、同氏は喜多川氏による性加害について「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」とコメントしております。
過去の告発や週刊文春による性加害疑惑の報道、その後の文春に対する名誉棄損訴訟で負けたことなど、これらについて知らないのではなく、実際に性加害が行われていたかどうか知らなないという回答です。
公式コメントでは性加害の事実関係については改めて事実確認をするという回答にとどまって、ほぼゼロ回答。
お顔を出して”会見”というかたちで、このような過去があったことを告発したカウアン・オカモト氏の行動は、賛否あるとは思いますが、とても勇気のいることだったのは間違いないと思います。
・・・ただ、このようなウワサは先ほども触れた通り過去多く表沙汰になっては事務所の圧力や忖度と呼ばれるもので、闇に葬られておりました。
この事務所へのマスメディア=日本のマスコミ(マスゴミ)の忖度の異常さは以前からアンチでは無い(関心もあまり無い)自分でも不可解に思っていたことがありました。
一番「?」だったのが、元SMAPの稲垣吾郎さんが公務執行妨害で逮捕されたとき、マスゴミに対し事務所は「稲垣吾郎容疑者と絶対記載、言わないように。稲垣吾郎メンバーと記載、言うように」と要請。
その意味不明な指示に「は~い💖」と当たり前のように「稲垣吾郎メンバー」と。
それに対し「絶対におかしい。アメリカでは警官に射殺されていてもおかしくない公務執行妨害を犯して・・・」と異議を唱えていたのは、芸能レポーターの梨元勝氏だけでした。
そして今回の事務所社長の藤島ジュリーK氏の謝罪動画が発表された翌日のスポーツ紙の一面も、なんと半分しか飾っておりませんでした。
藤島ジュリーK氏の動画3紙に対し、サトテルの2本塁打が2紙って、サトテルの2本塁打はもっと異常だったのでしょうか?(・・・まあ、デイリーはしょうがないかな?)
もはや、ここまで事務所の忖度とは、正直悲しくなる日本のマスゴミ。
今思うとジャニーズ事務所が、これほどまでにインターネットを嫌っていた理由が分かったような気がいたしました。
テレビ局・ラジオ局・新聞はいくらでも操作できる。
もみ消しもたやすい。
しかし、回線で全世界に繋がってしまっているネットには手の出しようが無い・・・と思われても仕方ないのでは無いでしょうか?
ただ、今回、事務所への批判を書こうと思ったワケでは無く、読売の坂本遊撃手も件もそうですが、大きなものにまったく抵抗できず真実を伝えない日本のマスゴミへの怒りと共に、未成年者に対する大人の性的暴行のおぞましさを扱った映画として、この映画を紹介したいと思いました。
※ネタバレありの記事になります。これからご覧になられる方はご注意を。※
2002年、アメリカの新聞「The Boston Globe」が、「SPOTLIGHT」と名の付いた新聞一面に、神父による性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過していたというスキャンダルを白日の下に晒す記事を掲載いたしました。
物語の舞台となった、現在、吉田正尚選手が活躍されているボストンという街ですが、こちらは映画評論家の町山智浩氏のお話しですと、アイルランド系の人種が多くカトリック教徒がほとんどをしめております。(人工の約30%くらい)
バチカン市国を拠点にしたカトリック協会はこの街にとって”絶対的な神”でもあり、バチカン市国はどんな王国にも負けない”帝国”とまで呼ばれておりました。
そのボストンのカトリック協会の数十人の神父による児童への性的虐待と、それを組織ぐるみで隠ぺいしてきた教会の実態をたった5人の新聞記事が暴き出した物語です。
きっかけは他州から来た新しいユダヤ系の局長が、小さなコラム記事で神父による少年への性的暴行を見つけ、これをなぜ記事にしないのかという意見が出ます。
しかし、カトリック協会こそが最大の神であると考えていた新聞記事たちは、最初は躊躇しながらも、取材を開始いたします。
被害者のほとんどが貧しい家庭の子どもで、1人の神父が30人の幼児(ほとんど・・・と言うか全員男子)への性的暴行を行っていたことを突き止めます。
そして、この件は単に1人の神父の問題では無く、ボストンだけで約70人の神父たちが同じようなことを行っていたことが発覚いたします。
なぜ貧しい家庭の子どもばかりが狙われていたかと言うと、いざとなったらお金で済ませようという神父の魂胆です。
それに驚く「SPOTLIGHT」の記者たち。
しかし、事はもっと大きく、「The Boston Globe」の上の人間がこの事実を知りながら、見て見ぬふりをしていたことも発覚いたします。
アメリカ合衆国全土を揺るがしかねない一大スクープ。
「The Boston Globe」の記者たちは、巨大な権力に対し、「真実」を記事にできるのであろうか・・・。
カトリックを信じ続けた記者たちが知る驚くべき事実。
被害を受けていた当時少年だった人への取材で語られる生々しい神父が行った性的暴行は聞いていて辛かったです。
自分たちの神であった存在のカトリック協会がおぞましい行いを隠蔽していた。
そのことを知った記者が、「もう教会へ行くな」と自分の子どもに言い聞かせようといたします。
子どもは不審に思い「なぜ?」と問いただすのですが、説明ができない父親の苦悩がよく描かれております。
オスカー候補になったレイチェル・マクアダムス。
いつも通り、お美しい。
彼女の存在が暗く、重い本作の一服の清涼剤的になっております。
・・・ですが、彼女たちの書き上げた記事を目の当たりにした母親が、自分が今まで信じていたものの正体を知り、そしてもう信じていた神はいないと悟ったときの絶望的な表情は、単にヘンタイ神父の行動に収まらず、今までカトリック協会を信じていた人たち(信者)への最大の背信行為だったと言えます。
この映画を日本のマスゴミに観てもらいたい1つ目の理由に「権力を持った人間のパワハラ・セクハラと言える未成年者への性的暴行(虐待)」の事実です。
これに関しては、本作と一緒にクリント・イーストウッド監督作品『ミスティック・リバー』(2003)も観てもらえればと思っているのですが、まだ物事の判別がつきにくい年齢の人への性的暴行はいつまでも消えない傷となってしまうということです。
本作でも大人になってからも麻薬でボロボロになったり、自殺をしてしまった少年の存在も明らかになります。
アカデミー賞作品賞受賞ですが、これに関しては批評家も賛否意見が分かれておりました。
下馬評では前回の記事の『ドント・ルック・アップ』のアダム・マッケイ監督の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が最有力と言われていたそうですが、ギリギリになって本作が強さを出してオスカー獲得となったと言われております。
この年のアカデミー賞は”レオ様祭り”と言われるほどレオナルド・ディカプリオのアカデミー賞最優秀主演男優賞受賞で盛り上がった年で、作品賞はあまり話題になりませんでした。(正直かなり地味な作品ですし)
常識では考えられないタブーを打ち破った「The Boston Globe」の5人の新聞記事の”ジャーナリズムのあり方”を描いた作品です。
今までずっと疑問に思ってきたことですが、なぜ日本のマスゴミは加害者の人権は尊重するのに被害者の人権は無視し続けるのだろうということでした。
ジャニーズ事務所、読売、巨大な権力にもの言えない。
それもありかもしれません。大いに結構。
しかし、そのとき、日本のジャーナリズムは終焉を迎えます。(と、言いますか、そんなものは最初から無かったのかもしれません)
本作、『ミスティック・リバー』、そして『大統領の陰謀』(1976)を観て、「真のジャーナリズムとは何か?」を手遅れになる前にもう一度考えてもらいたいです。