『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』
2021年製作/日本映画/上映時間:104分/G/2021年7月30日日本公開
監督:高橋渉
声の出演:小林由美子
森川智之 ほか
臼井儀人氏のコミックを原作にしたアニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場版シリーズ第29弾です。
全寮制の超エリート校に体験入学したしんのすけたちが、校内で次々と起きる怪事件の謎に挑みます。
あらすじ
風間くんに誘われ、全寮制の超エリート校・私立天下統一カスカベ学園で1週間の体験入学をすることになったしんのすけたち。体験入学での成績が正式入学への足掛かりになると知り、風間くんはみんなで入学できるようにと張り切る。だが、そんな彼が尻に奇妙なかみ跡をつけられた姿で発見され、目覚めると真面目で頭脳明晰(めいせき)だった以前とは真逆の人間になってしまっていた。しんのすけたちは学園の落ちこぼれ生徒会長・阿月チシオとカスカベ探偵倶楽部を結成し、事件を捜査する。
(シネマトゥデイより)
人気長寿アニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場版29作目です。
シリーズで初めて学園ミステリーの要素を取り入れられております。
監督は「クレヨンしんちゃん」のテレビシリーズや劇場版を多数手がける高橋渉。
Netflixにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
また「マンダロリアン」、「ホーク・アイ」の鑑賞のあとなので、できれば上映時間短めの作品で、ここのところ暗い映画が続いていたので、少し明るい作品を・・・と思い、たどり着いたのがこちら。
『しんちゃん』の映画は当たり、ハズレはありますが、当たるとでかいので、それを期待しての鑑賞でした。
風間くんの誘いで全寮制の超エリート校「私立天下統一カスカベ学園」(通称:天カス学園)に1週間、体験入学することになったしんのすけたち。
体験入学で良い成績を収めれば正式に入学できると聞いた風間くんは、みんなで一緒に天カス学園に入学することを夢見る。しかし、その風間くんが、お尻に奇妙な噛み跡をつけられた姿で倒れているところを発見される事件が発生。
さらには、カスカベ防衛隊で一番のエリートのはずの風間くんが、目を覚ますとおバカになっていた。
この事件を解決するため、しんのすけたちは、天カス学園の落ちこぼれ生徒会長・阿月チシオとともに「カスカベ探偵倶楽部」を結成。学園内に残されたメッセージと目撃証言から容疑者が浮かび上がるが・・・。
久々に「しんちゃん」鑑賞いたしました。
神戸に引っ越ししてからは、まったく観ていなかったので、小林由美子さんにバトンタッチしてからの作品としては初鑑賞です。
違和感はそれほどはありませんでした。
「クレヨンしんちゃん」というアニメーション作品は基本”永遠の5歳児”ということで、年を取らないという設定の作りになっております。
(年をとっていたら、すでにひろしより年上)
そこは「サザエさん」と同じと言っていいと思います。
その年を取らない=いつまでも5歳児という「しんちゃん」ワールドで青春を描いたところが本作の凄いところだと言えます。
しんちゃんだけ年を取らず、ほかのキャラクターは年を取る『ブリキの太鼓』のような作品(例えが古い)では無く、周囲のキャラも永遠に同じ年です。
そのしんちゃんの親友の風間くんが本作のキーパーソンになるキャラクターです。
冒頭、エリート学園への体験入学のため、1週間留守にするしんのすけを母・みさえが強く抱きしめるシーンがあります。
これはいずれ訪れる子離れ。
母親と息子の別れを暗示しているかの描写に感じます。
風間くんはエリート思考が強い、マイペース(過ぎる)しんのすけとまったく違うタイプの幼稚園児です。
ですが、しんのすけたちカスカベ防衛隊のみんなといつまでも一緒にいたい。
しかし、やがて大きくなり、それぞれが違う友だちを作り離ればなれになる。
だからこそ、このエリート学園に一緒に入学したいと願います。
「しんちゃん」という作品で未来や将来のことを語るというのは、とても珍しい、あの名作『オトナ帝国の逆襲』以来かもしれません。
また、現代社会のエリート思考の怖さのようなものもしっかり描かれております。
人間の価値観を数値で計り、AIが人間の代わりに子どもたちを指導していきます。
そして優秀と認められた生徒にポイントが入り、お昼ごはんのレベルもアップ。
最優秀の生徒は毎日豪勢にカニしゃぶ食べられます。
・・・でも、毎日カニしゃぶ食べても飽きる気も。
そんな中、近づいてはいけない時計塔で謎の吸ケツ鬼(血では無くお尻を噛むので)の仕業と思われる事件で風間くんが犠牲になります。
そこに残されたダイイングメッセージ(死んではいないんですけどね)をヒントに事件を解決しようとするカスカベ防衛隊。
エリート至上主義やAIによる人格操作など、かなり近未来訪れるかもしれない恐ろしい世界観を映し出した内容になっておりました。
ゲストキャラの立ち位置も良かったと思いました。
みさえの言う「周りからどう思われようと、頑張っている人をバカにすることは間違っている」というセリフは結構胸に来ました。
その言葉に勇気づけられる阿月チシオ。
ミステリーの部分も良くできていて、真犯人分かりませんでした。
ここは本来同時期公開の『名探偵コ○ン』を意識しての作りになっていたように思いました。
まぁ、犯人が分かる決めてに関しては「・・・」でしたが。
ボーちゃんの女子生徒への告白シーンにビックリ。
まさおくんのリーゼントと大人にならない園児たちの成長、そして、いずれ訪れる別れのようなものを描いたしんちゃん版『スタンド・バイ・ミー』的な(褒めすぎ)映画でした。
「ネガティブな未来を暗示させるものを子ども向け映画でやってはいけない」という評論家の意見もありましたが、そこは難しいところですね。
しんちゃんほどはた迷惑な園児はいないかもしれません。
ですが、「オラの心はエリートだゾ」という言葉の通り、しんちゃんによって多くの人が勇気づけられたのも事実です。
観終わったあと、焼きそばパンが無性に食べたくなる映画でした。