原題:Foxcatcher
2014年製作/アメリカ映画/上映時間:135分/PG12/2015年2月14日日本公開
監督:ベネット・ミラー
出演:スティーヴ・カレル
マーク・ラファロ ほか
デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンが起こした殺人事件を映画化した実録ドラマです。
2014年・第67回カンヌ国際映画祭において監督賞を受賞。
2015年・第87回アカデミー賞において、監督賞、主演男優賞(スティーヴ・カレル)、助演男優賞(マーク・ラファロ)など計5部門にノミネートされております。
あらすじ
大学のレスリングコーチを務めていたオリンピックメダリストのマーク(チャニング・テイタム)は、給料が払えないと告げられて学校を解雇される。失意に暮れる中、デュポン財閥の御曹司である大富豪ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)から、ソウルオリンピックに向けたレスリングチーム結成プロジェクトに勧誘される。同じくメダリストである兄デイヴ(マーク・ラファロ)と共にソウルオリンピックを目指して張り切るが、次第にデュポンの秘めた狂気を目にするようになる。
(シネマトゥデイより)
『マネーボール』などのベネット・ミラー監督が、1996年にアメリカで起こったデュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンによるレスリング五輪金メダリスト射殺事件を映画化したサスペンスです。
御曹司デュポンを『バイス』などのスティーヴ・カレルが演じ、『ザ・ロストシティ』などのチャニング・テイタムや『アベンジャーズ』などのマーク・ラファロら実力派が共演。
今月もよろしくお願いいたします。
BDにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
この作品も寝かせておいていたのですが、寝かせ過ぎて製作から、かなりの年月経ってしまい、このブログで紹介するの厳しいかな~と思ったのですが、とても高評価の映画だったので、意を決して鑑賞いたしました。
チャニング・テイタム、苦手なんですよね、正直・・・。
レスリングのオリンピック金メダリストでありながら経済的に苦しい生活を送るマーク。ある日、デュポン財閥御曹司ジョン・デュポンからソウル・オリンピック金メダル獲得を目指したレスリングチーム“フォックスキャッチャー”の結成に誘われる。
名声、孤独、隠された欠乏感を埋め合うように惹き付け合うマークとデュポンだったが2人関係は徐々にその風向きを変えていく。さらにマークの兄、金メダリストのデイヴがチームに参加することで三者は誰もが予測しなかった結末へと駆り立てられていく・・・。
・・・鑑賞後、この映画の監督が大傑作『マネーボール』と同じ人と知り、「そうだったのか!」と思ってしまいました。
タイプはかなり違いますが、どちらも実話を基にしたスポーツを題材にした人間ドラマ。
「お金だけでは名声や栄誉は手に入れられない」。
「もし、仮に手に入れられたとしたら、その手柄は誰のものなのか?」。
そのようなことを考えさせられました。
ヴィッセル神戸はJ1リーグ優勝を争っているので、そちらは置いておいて、東北楽天ゴールデンイーグルスの三木谷浩史オーナーにぜひとも、どちらの作品も観てもらいたいと思いました。
観ている間、終始背筋が寒くなる感じがいたしました。
とにもかくにもスティーヴ・カレルの狂気に満ちた名演が光ります。
この作品の前はライトコメディ中心にキャリアを積んでいたのですが、この役柄はその後の作品も含めたキャリアベストと思えるものでした。
「なぜ御曹司デュポンが殺害に至ったのか分からない」という、申し訳ない言い方ですが”おめでたい”方の感想レビューがありましたが(それまで2時間何を観ていたのだろうか?)、わたくしもおつむがいいとは言えませんが、それらに方にも分かってもらいたいので、自分なりの解釈を交えて感想を綴っていきたいと思います。
1984年のロサンゼルスオリンピックでレスリング金メダルを獲得した兄・デイヴと弟のマークのシュルツ兄弟。
しかし、栄誉は手に入れましたが、アメリカ合衆国は彼らに対し冷たく、オリンピック後も貧しい暮らしをしておりました。
そんな弟・マークの元に1本の電話が。
その主はアメリカの大富豪の御曹司、ジョン・デュポン。
彼は次のソウルオリンピックに向けて金メダリストを養成するレスリングチーム”フォックスキャッチャー”を作ります。
そこへ勧誘されるマーク。
デュポンはマークとは逆に巨万の富は手にしておりますが、自らの栄誉が手に入れたいと思っておりました。
しかし、彼(マザコンと言っていい感じでした)の母親は馬術に夢中でレスリングを嫌っている。
そんな母親を見返すためにも、どうしてもレスリングの金メダリストを生み出したという”肩書き”=栄光が欲しかった。
しかし、かなり型破りの指導やエキセントリックな行動に徐々に嫌気が差してきたマーク。
徐々に二人の距離が広がっていきます。
マークの実力を知るがうえで、どうしても彼の指導者としての(金メダリストを生み出したという)肩書きが欲しいデュポンは彼の最大の理解者、兄のデイヴをチームに入れようとします。
妻子のいるデイヴは最初は断ったのですが、弟可愛さに渋々承諾いたします。
デュポンと違い、マークへの的確な指導方法を身につけている兄のデイヴ。
彼の指導で甦ったマークの姿を見て、徐々に自分には無い、その才能や素質に対し、嫉妬心が芽生えてきます・・・。
人間の持つエゴや嫉妬心をもの凄く鋭く、そして的確に描いた傑作だと思いました。
貧乏人の自分のそれこそ”嫉妬”なのかもしれませんが、お金持ちは何でも手に入れられる代わりに、どこか心が満たされない、そのような人が多いように感じてしまいました。
近年は違う・・・と思いたいのですが、もしアメリカ合衆国がオリンピックの金メダリストにもっと「優しかった」ら、このような悲劇は生まれなかったかもしれません。
若い女性が誰一人登場しないと言う、オヂさん的には少し寂しいところもありましたが、デュポンの母親を演じるヴァネッサ・レッドグレーヴの圧倒的な存在感の演技には感動を覚えました。
マーク・ラファロが本当にすばらしい!
と、言いますか、この人が「ダメ」だった演技をしたという記憶がありません。
オスカー受賞は叶いませんでしたが(受賞者が『セッション』のあの先生では仕方ないかも・・・?)、この名演は心に残ります。
かなりのメイクで実在のデュポンにそっくりだったスティーヴ・カレル。
アカデミー賞は実在の人物を演じると受賞が近いのですが、どういうワケかこの年はノミネート5人中4人が実在の人物を演じておりました。
唯一違うマイケル・キートンも「本人役だろ?」と言われたらそうかもしれないので、そうしたら全員。
・・・で、オスカーは殺人御曹司では無く、天才ホーキング博士の元へ・・・。
実在の人物+難病となると、アカデミー賞では無双ですね。(『マイ・レフトフット』のデイ=ルイスなどなど)
オスカーには無縁でしたが、心に響く報われない男たちを描いた悲劇だと思いました。
「実際のデュポンが精神分裂症だったことの説明がない」という意見もありましたが、スティーヴ・カレルの演技を観て、これで健全な精神と思わないのが普通だと言える気がいたします。
あまりに重いので、気分の優れないときの鑑賞はオススメできません。
少し実際の事件と違うように感じたものがあるとすれば、ソウルオリンピックは1988年なので、殺人事件はその8年後なのですが、映画ですと、オリンピックのすぐ後のように描かれていた感じがいたしました。
マークは筋肉バカ的なところがあったようなので、チャニング・テイタム、適役だったと思いました。(←失礼やろ!)
10年近く前の古い映画ですが、もし、まだ未見の方がいらしたら、機会があれば「是非」と言いたい映画でした。