『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』
原題:The Death of Dick Long
2019年製作/アメリカ映画/上映時間:100分/PG12/2020年8月7日日本公開
監督:ダニエル・シャイナート
出演:マイケル・アボット・Jr
ヴァージニア・ニューコム
アンドレ・ハイランド ほか
『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督が実際に起きた出来事に着想を得て、アメリカの田舎町を舞台に奇妙な事件のてん末を描いたダークコメディです。
あるバンドの仲間たちがひた隠しにする、メンバーの怪死の真相が次第に明らかになっていきます。
あらすじ
バンド仲間のジーク(マイケル・アボット・Jr)とアール(アンドレ・ハイランド)、ディック(ダニエル・シャイナート)がガレージでバカ騒ぎをしていると、突然、あることが原因でディックが死んでしまう。警察は殺人事件とみて捜査を開始する一方、ジークとアールはディックの死因を知りながら、自分たちの痕跡を消そうと躍起になっていた。
(シネマトゥデイより)
田舎町で起こったある奇妙な事件の顛末を描いた、『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督によるダークコメディです。
『スイス~』に引き続き、気鋭の映画スタジオ・A24と再タッグを組んでおります。
出演はマイケル・アボット・Jrやヴァージニア・ニューコムなどのほか、監督がタイトルロールのディック・ロングを演じております。
dTVにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
またも、Amazonプライムビデオは繋がらず・・・。
間もなく(と言っても来月上旬までありましたが)見放題終了とのことと、A24ということが気になり、今回は本作を選びました。
売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックは、練習と称してガレージに集まり、いつものようにバカ騒ぎをしていたが、ある原因によってディックが突然死んでしまう。
誰もが知り合いの平穏な小さな田舎町では、事件の噂がまたたく間に広がり、人びとの話題はディックの死でもちきりになる
殺人事件として警察が捜査を進める中、ディック死亡の真相を知るジークとアールは、なぜか彼の死因をひた隠しにし、自分たちの痕跡を揉み消そうとする・・・。
※女性の方には不快に思われる表現があります。ご了承ください。※
く、くだらなかった。(いい意味で)
本当にバカバカしく、アホな展開てんこ盛りの作品でした。
田舎町を舞台に、殺人事件(?)とバカな男たち、女性保安官とコーエン兄弟の『ファーゴ』を連想させる作りになっておりました。
ある夜、病院の前に男性の死体が置かれている。
身元は不明。
その男は”リチャード・ロング”。
通称”ディック・ロング”。
実はこの名前、そして映画のタイトルが重大なヒントになっております。
それは、”ディック・ロング”とは日本語で言うと「でかいチ○ポ○」です。
血まみれのシートに子どもを乗せて学校へ送ろうとするおマヌケな主人公。
そのシートを懸命に掃除するシーンは『パルプ・フィクション』へのオマージュ?
このようなお下品で不謹慎な笑いが前半爆発しまくっております。
「なぜ死んだのか?」がクライマックスではありません。
意外と早くに真相が判明いたします。
今の時代にDNA検査があったのが良かったですね。
それが無い時代の、あの名探偵のシャーロック・ホームズもエルキュール・ポワロも金田一耕助も解決できなかったかもしれない驚くべき真相。(笑)
・・・ただ、その真相が判明してからの展開が少し長く感じました。
もう少し短くできれば良かったかな?と思いました。
そこに暮らす人々の「他者の視線の恐怖」が映し出されていたと感じました。
誰にも知られたく無い本当の自分のありさま。
性癖など、人それぞれだと思います。
ですが、それを他人に知られたく無いが故に、偽りの仮面を被って人は生きている・・・。
同性婚している女性保安官に(そのことは知らず)「ゲイは嫌いだ」とふと言ってしまう主人公。
このような何気ない一言が他者の心を傷つけてしまいます。
自分を知らぬ人間のいない小さな田舎町だから、本当の自分をさらけ出すことができず、他人の目を気にしすぎてしまった男たちの悲劇、そして喜劇を描いた映画だと思います。
題材が題材で、お下品さ満載なのでオススメは難しいですが、このような珍作を生み出すのがA24の凄さかもしれません。
ラスト、池から自動車を引き上げるシーンは『サイコ』を思い出してしまいました。
親しく無いアメリカ人男性に間違っても「ディック・ロング」と言わないでくださいね。