『カモン カモン』
原題:C'mon C'mon
2021年製作/アメリカ映画/上映時間:108分/G/2022年4月22日日本公開
監督:マイク・ミルズ
出演:ホアキン・フェニックス
ギャビー・ホフマン
ウディ・ノーマン ほか
『ジョーカー』などのホアキン・フェニックス演じる主人公と9歳の甥っ子との温かい共同生活を、モノクロームの映像で描くヒューマンドラマです。
子どもたちにインタビューする仕事をしているラジオジャーナリストが、甥っ子との生活に戸惑いながらも距離を縮めていきます。
監督は『20センチュリー・ウーマン』などのマイク・ミルズ。
あらすじ
ニューヨークでラジオジャーナリストをしているジョニー(ホアキン・フェニックス)は、ロサンゼルスに住む妹に息子のジェシーの面倒を見てほしいと頼まれる。9歳のジェシーはジョニーが独身でいる理由や自分の父親の病気のことなどを遠慮なく尋ね、ジョニーを困惑させるが、二人は次第に仲良くなる。そして、ジョニーは仕事のために戻ることになったニューヨークへジェシーを連れて行くことにする。
(シネマトゥデイより)
突然始まった共同生活に戸惑いながらも歩み寄っていく主人公と甥っ子の日々を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマです。
『ジョーカー』でアカデミー賞を受賞したホアキン・フェニックスが主人公を演じ、共演にウディ・ノーマンやドラマシリーズ「トランスペアレント」のギャビー・ホフマンなど。
BDにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
当初はA24かサーチライト・ピクチャーズのホラー映画を鑑賞しようと思っていたのですが、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』が思いっきりホラー映画だったので、違うジャンルがいいと思い、同じA24のハートウォーミングな作品を選びました。
NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。
好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ 独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録 音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。
仕事のため NYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行く ことを決めるが・・・。
とても心が温まる、愛おしさに包まれた優しい感動を呼ぶ映画だと思いました。
ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』のあとに、本作を選択した理由もうなずけるような気がいたしました。
そのホアキンの妹役をギャビー・ホフマンという女優さんが演じているのですが、「どこかで聞いた名前だな~」と思っておりましたら、わたくしの人生映画ベスト5に間違いなく入る、ケヴィン・コスナー主演の『フィールド・オブ・ドリームス』に出演していた女優さんでした。
こちらが、その写真。
ケヴィン・コスナーの娘役で当時6~7歳。
現在は32歳。(本作撮影時はそれから-2歳くらいでしょうか?)
『フィールド・オブ・ドリームス』が1989年製作の映画(日本公開は1990年)なので、もうお母さんを演じてもおかしくない年齢になったのだな~と思い、久々に姿を拝見できたことに感慨深いものがありました。
『フィールド・オブ・ドリームス』以外ですと、日本劇場未公開作品ですが、ジョン・ヒューズ監督の『おじさんに気をつけろ!』(1989)という映画も面白く、『ホーム・アローン』出演前のマコーレー・カルキンの妹を演じておりました。
ドラマチックな展開も盛り上がるようなエピソードも無い静かな作品です。
しかもモノクロ。
それもあって、yahoo!映画レビューの評価は散々。
役立ち度の高い意見のほとんどが☆1か2。
少し抜粋。
「画面を白黒にしただけで作品に何の価値も見いだせない正直に言ってつまらないの一言の作品だった。 とにかく最初から最後まで盛り上がりは無く二人の味気ない会話が延々と最後まで続くのはとにかく苦痛でしかなかった」
「どうしてホアキン・フェニックスはこんな作品に出ると決めたのか謎でしかないが、とても『A24』が担当したとは信じ難いくらいの駄作に、鑑賞途中からギブアップ宣言してしまうこと間違いなし」
「こんな意味不明で、ただの日常切り取り(趣味の悪い)の脈絡ない映像をツギハギしたものを作るんだろう?」
いつから日本人の映画ファンの目はこんなに乏しいものになってしまったのかと思う意見ばかりですね。皮肉を込めて言いますが・・・。
このようなレビューを書かれた人は、おそらく掃いて捨てるほどの友人がいて、孫の代まで将来に不安の無い安定した幸せ過ぎる暮らしを送っているのでしょうね。イヤミを込めて書きますが・・・。
「俺の人生には、1分たりとも幸せな瞬間なんてなかった」。
このセリフに代表されるように、『ジョーカー』でホアキンが演じたアーサーは社会の底辺でのたうちまわる暮らしをしていて、巨万の富を持つウェイン家やデ・ニーロ演じるコメディ番組の司会者と正反対の位置に存在し、それらにアーサーという仮面を脱ぎジョーカーへ変貌し彼らや社会への復讐の鬼と化し狂気に染まる姿が描かれます。
タイプはまったく違いますが、本作も人の心の変化を劇的なタッチでは無く、緩やかで自然体のように描いていると思います。
劇的な展開で心の変化を描いた方が万人向けするかもしれませんが、本作の作りにはそぐわないように思います。
派手は映画がお好みの方は、それこそMCU作品や『スター・ウォーズ』のような映画ばかりご覧になるのがいいと思います。(Disney+で数多く配信してますよ)
モノクロであることに批難している人は知らずに観てしまったのでしたら「お気の毒」と言えますが、予告編などを観て分かったうえでの鑑賞でしたら、「激辛料理は大嫌い」な人が激辛料理を注文して文句言っているのと同じなので、同情はできませんね。
またまた皮肉、イヤミたっぷりに書かせていただきました。
ラジオジャーナリストで全米の子どもたちにインタビューをしているホアキン演じるジョニー。
映画はデトロイトに始まり、LA、オークランド、NY、ニューオリンズと移動していきます。
そこで「将来は明るいと思う?」、「この街の良さは?」、「スーパーパワーを手にいれたら何をしたい」などと子どもたちに質問していきます。
この質問に対する子どもたちの返答なのですが、シナリオに書かれたセリフでは無く、その子どもたちのホンネなのではないかと思いました。
インタビューに答える子どもたちのそれぞれの個性。
これがとてもリアルで心に響きます。
子どもとはとても扱いにくいものだと思います。
すぐにグズるし、自分勝手で容赦がありません。
だからこそ大人がそばにいなくていけない存在なのですが、子どものいないジョニーは扱いが分からずてんてこまい。
ですが、嫌がる甥っ子の頭を洗ってあげるなど、何でもないような行動から徐々にお互いの距離は縮まっていきます。
『ジョーカー』の名演が記憶に新しいホアキンですが、本作のような善人タイプも悪く無いと思いました。
明快にそのように言ったワケでは無いのですが、ホアキンの本作出演の理由のひとつには、ちょうど彼に長男が生まれた時期と重なっているのが、まったくの無関係とは言えない気がいたします。
古い映画ファンは名作『クレイマー、クレイマー』を思い出してしまうような描写が多く、大人の男性の子どもの扱いの難しさは昔も今も変わらないものなのだと感じてしまいます。
甥っ子が欲しがった歌が流れる電動歯ブラシ。
このようなものがあることを初めて知りました。
子どもは散々大人の世話になり、そして大人になって、今度は世話になった親の面倒(介護)をする。
そのような繰り返させる人生を美しいモノクロームの映像で描いた作品でした。
『カモン カモン』とは「先へ、先へ」という意味だそうです。
辛い道のりでも前へ進むことを伝えているタイトルだと思いました。
「伯父さんは友だちがいないから、僕が一番の親友だね」という甥っ子のセリフには少し胸が熱くなりました。
ホアキンがラーメン食べるシーンがあるのですが、彼は菜食主義者なので、当然注文したのは「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」でしょうね?(あれは林原めぐみさんのアドリブだと聞いてますが・・・)