『ブロンド』
原題:Blonde
2022年製作/アメリカ映画/上映時間:167分/R18+/日本劇場未公開作品
監督:アンドリュー・ドミニク
出演:アナ・デ・アルマス
ボビー・カナヴェイル ほか
永遠のセックスシンボルとも言われたハリウッドの伝説的女優マリリン・モンローを題材にした作品です。
ジョイス・キャロル・オーツの小説「ブロンド マリリン・モンローの生涯」を原作に、『ジェシー・ジェームズの暗殺』、『ジャッキー・コーガン』のアンドリュー・ドミニク監督が監督を担当。
ブラッド・ピットが製作を務め、彼の映画製作会社・PLAN Bが製作会社として名を連ねております。
あらすじ
不安定な幼少期を過ごしたのち、映画スターへの道を歩み始めたノーマ・ジーン(アナ・デ・アルマス)。女優マリリン・モンローとして『紳士は金髪がお好き』などに出演して一躍トップスターとなった彼女は、ハリウッドのセックスシンボルとして脚光を浴びる。しかしその裏側では、本来の自分であるノーマと、世間がイメージするマリリンという虚像とのギャップに苦しんでいた。
(シネマトゥデイより)
伝説の映画スター、マリリン・モンローの素顔に迫るドラマです。
マリリンことノーマ・ジーンを『ブレードランナー 2049』などのアナ・デ・アルマスが演じるほか、エイドリアン・ブロディ、ボビー・カナヴェイルらが共演。
本年度・第95回アカデミー賞において主演女優賞(アナ・デ・アルマス)にノミネート。(発表はいよいよ本日・・・。今午前5:00なので、6時間後くらいかな?)
Netflixにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
昨日発表された、本年度・第43回ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)において、最多8ノミネートされ、見事(?)最低映画賞・最低脚本賞を受賞。
お祝いの意味を込めまして(祝わなくていい)今回は本作を選びました。
R18+指定の作品なので、多少過激な言葉を使うかもしれません。
ご了承ください。
マリリン・モンローは正直、それほどハマらなかった女優さんでした。
自分が生まれたときにはすでに亡くなられていて、同じ時代を生きたことが無いこともありますが、”永遠のセックスシンボル”と言われ、当時の映画ファンをくぎ付けにしたと知ったあとも、過去作それほど多く観てはおりません。
本作で紹介される代表作、『ノックは無用』、『ナイヤガラ』、『紳士は金髪がお好き』は観ておりません。
観ている作品は、まだ端役だったときの『イブの総て』、『バス停留所』、ビリー・ワイルダー監督が大好きなので『七年目の浮気』、『お熱いのがお好き』くらいです。
スカートが舞い上がるシーンで有名な『七年目の浮気』ですが、正直ビリー・ワイルダーの作品の中で一番つまらなかった・・・。
そんなマリリン・モンローの波乱の人生を描いた伝記映画・・・と思ったら大間違いで、マリリン・モンローという女優を演じ続けたノーマ・ジーン(本名)の幸なき人生を事実とフィクションを織り交ぜ、時にファンタジックに描いた珍品でした。
幼少期、シングルマザーの鬼母に虐待をうけ、隣人に助けを求めたノーマは「育てられない」という理由から養護施設へ送られます。
・・・で、次のシーンで、すでに俳優養成所で演技を学ぶノーマが。
そこまでの経緯や、なぜ彼女が女優を目指そうとしたのか、一切語られません。
約3時間ある映画なので、あとでちゃんと描かれるだろうと思ったら、一切無し。
オーディションを受けにいった際、性的暴行をプロデューサーに受け、役をつかみます。(それが『ノックは無用』かな?)
当時は珍しい・・・と言いますか存在しなかったセックスアピール全開の彼女のルックスなどは一躍脚光をあびることになります。
チャップリンとエドワード・G・ロビンソンの息子との奇妙な3人の交際が始まります。
チャップリンは親子揃って下半身も”喜劇王”だった・・・。(苦笑)
ここから3Pシーンのオンパレードで(すみません。R18+なので)、ノーマは妊娠をします。
産みたい気持ちが強かったノーマですが、仕事などに差し支えることから、中絶を決意いたします。
その後、2人のどら息子と別れ、メジャーリーガーだったスーパースター、ジョー・ディマジオと結婚をします。
この2人が結婚したというエピソードは知っておりまして、記憶違いで無ければ新婚旅行は日本で、当時スーパースター2人が来日で大騒ぎだったと聞いております。
ディマジオと別れたあと、劇作家のアーサー・ミラーと知り合い結婚。
2人の間に赤ちゃんができますが、砂浜という足場の不安定なところで転び流産。
どんどん精神不安定になっていくノーマは交際が有名となっていたケネディ大統領と何とホワイトハウスで性的関係を結ぶことになっていきます。
ここまでが大まかなあらすじですが、ラジー賞は関係なく感想を書きたいと思いますが、本作を伝記映画と認めたく無いと思ったのは、フィクションだと思われるシーンの多さもありますが、先ほど書いた「なぜ・・・になったのか?」という部分が全部削られてしまっているところです。
ノーマが女優になろうとした理由もですが、どのような経緯でディマジオやケネディ大統領と知り合いになったのかというエピソードがまったく描かれない、不親切極まる作りに開いた口がふさがらない状態に。
自分としては、その部分が一番知りたかったのでガッカリ。
母親とのエピソードも中途半端なんですよね。
彼女がマリリン・モンローになったあとも精神病院で隔離されている母親の面会に行っておりましたが、その後どうなったかディマジオとの交際辺りから、まったく描かれません。
あの鬼母は死んだのか、まだ生きていたのか、分からずじまい。
最初の妊娠のとき、中絶したことへの罪悪感からか、やたら胎児が映しだされるシーンが出てくるのですが、わたくし『2001年宇宙の旅』?とツッコミ入れたくなりました。
このような幻想的なシーンよりもっと描かなければいけないものがあったように思いました。
ノーマは幼少期から最期を迎えるまで、未だ見たことの無い父親の影を追い求めていたような作りになっております。
自分が世界的映画スターになり、自分の存在を知れば必ず会いに来てくれる。
そんな幻想に取り憑かれていたかのように思いました。
これも私の記憶違いで無ければ、最後の結婚相手だったアーサー・ミラーがしばらく映画界から離れていた彼女のため書き下ろしたシナリオを映画化した『荒馬と女』という映画でクラーク・ゲーヴルと共演。
これが2人の遺作になったと聞いておりますが、このエピソードに関してはまったく本作に登場いたしません。
また有名な発言の「シャネルの5番を着て寝る」というセリフもありませんでした。
普通の伝記映画にしたくない脚本&監督のアンドリュー・ドミニクの意図は分かりましたが、あまりにも不親切な作りで、ある意味ノーマ・ジーンという女性を冒涜しているかの描写の多さに気分が悪くなりました。
ただ、褒めるところが一切無い日本映画を見慣れたせいか、少なくとも主演女優がオスカー候補になったなど、良かったところもあるのは間違いありません。(アナ・デ・アルマスすばらしい演技でした。ですが、最優秀はミシェル・ヨーかケイト・ブランシェットだと思います。当たったら”いいね”くださいね。・・・もちろんウソです)
3年くらい前のラジー賞で『キャッツ』が最低映画賞を受賞したとき、「今後100年この映画を超える酷いものは現れないだろう」という意見にまったくの同感だったので、『キャッツ』より酷い映画が登場しなかった年は(永遠かもしれません)作品賞部門は”該当作なし”でいいような気がいたしますが・・・。
マリリン・モンローは世界中から愛されましたが、ノーマ・ジーンは誰の愛にも恵まれなかった。
そんな切ない気持ちになりました。(あの描写が事実でしたら、ディマジオの株は大暴落です)
『アド・アストラ』に次ぐ、ブラッド・ピット&PLAN B製作映画の摩訶不思議な映画と言っていいでしょう。
女性がお腹に宿った赤ちゃんを中絶することの辛さは描かれております。
なので、”読売の坂本遊撃手”にはぜひともオススメしたい作品ですね。