『バビロン』
原題:Babylon
2022年製作/アメリカ映画/上映時間:189分/R15+/2023年2月10日日本公開
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ブラッド・ピット
ディエゴ・カルバ ほか
『ラ・ラ・ランド』で史上最年少アカデミー賞監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督が、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビーら豪華キャストを迎え、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に撮り上げた人間ドラマです。
本年度・第95回アカデミー賞において、作曲賞、美術賞、衣装デザイン賞にノミネート。
あらすじ
1920年代のアメリカ・ハリウッド。スターを夢見る新人女優のネリー(マーゴット・ロビー)と映画製作を目指す青年マニー(ディエゴ・カルバ)は、大スターのジャック(ブラッド・ピット)が開いたパーティーの会場で出会い、親しくなる。恐れを知らないネリーはスターへの階段を駆け上がり、マニーもジャックの助手となる。そのころ、映画業界はサイレント映画からトーキー映画への転換期に差しかかっていた。
(シネマトゥデイより)
サイレント映画の大スター、大胆不敵な新人女優、映画製作を夢見る青年が、サイレントからトーキーへと移り変わる激動の時代を描いた人間ドラマです。
共演にディエゴ・カルバ、トビー・マグワイア、キャサリン・ウォーターストン、オリヴィア・ワイルドなど。
Netflixにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
『セッション』、『ラ・ラ・ランド』が大好きなので、デイミアン・チャゼル監督の作品はぜひ観ておきたいと思いつつ、上映時間の長さで多少躊躇しておりましたが、頑張って(?)先ほど観終わりました。
1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャックは毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役。
会場では大スターを夢見る、新人女優ネリーと、映画製作を夢見る青年マニーが、運命的な出会いを果たし、心を通わせます。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていきます。
マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出します。しかし時は、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は、大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく・・・。
いきなり象さんの大量の糞の発射シーンから始まり、その象さんを運び出した映画人が集うパーティのポルノまがいの乱交シーンにたまげ、開いた口がふさがりませんでした。
その後もコカイン、当時はタブーとされていた同性愛、『エクソシスト』、『スタンド・バイ・ミー』もビックリの嘔吐シーン、生きたままのネズミを食べるシーンなど、観ていて気分の悪くなるものもオンパレードで「な、なんだんだ?」と思ってしまいました。
監督の言いたいこと、伝えたことはだいたい理解できます。
サイレント(無声映画)からトーキーへ移り変わる映画界。
それによって、名声を放っていたスターたちの末路・・・。
ただ、それに関しては、本作後半に登場するジーン・ケリー監督&主演の『雨に唄えば』(1952)を観た方がいいと思います。
こちらは楽しく気分が良くなる映画です。
・・・が、本作は『雨に~』でその声の酷さによって消えてしまう映画スターの(『雨に~』では笑いもの的に描かれております)悲劇の方を前面に出した作りになっていたように思いました。
映画がトーキーになり、音を拾わなくてはならなくなり、マイクのある位置に女優は止まらなければいけない。
また撮影用のカメラは音が大きいので、防音効果のある密室に閉じ込められての撮影。
エアコンも音が出るので使えない。
脱水症状を起こしたカメラマンが死んでしまう・・・というシーンはブラックジョークなのかもしれませんが、笑えませんでした。
ヘタな合唱団(?)の唄う姿を撮影しているところに、主人公のマニーが演奏をしている黒人トロンペットに「どう思う?」と尋ねると「オレたちを撮った方がいい」と言われ、黒人ジャズミュージシャンのスターが誕生いたします。
この人物がルイ・アームストロングだったと言うのは、鑑賞後知りました。
サイレントからトーキーに移り、消えていった映画スターは多いと思います。
しかし、そのテーマもビリー・ワイルダー監督の大傑作『サンセット大通り』(1950)で描かれております。
本作はさすがにワイルダーに及ばないですが、消えてしまう映画スターの悲哀というものは、描けていたように感じました。
ブラッド・ピットがアルコール依存症の映画スターを演じているところが、ご本人(アンジーと別れるキッカケになる)アル中で施設に入ったころがあるほどなので、どうしても役柄と本人ダブって観えてしまいました。
そのブラッド・ピットが「俳優引退」(ニコラス・ケイジも言っておりますが)宣言した、しないというウワサが流れておりますが、映画スターはある意味悲しい存在であることを描いた映画です。
スターは短命で消えていってしまいます。
むしろ、長く生き残れるのがゴシップライターや裏方(プロデューサーなど)という皮肉が込められた作品と言えるかもしれません。
本作で出演とプロデューサー兼任しているトビー・マグワイア。
『スパイダーマン』が大好きな人間にはトラウマになってしまうお顔で登場。
汚い、グロい、エロい、気持ち悪い。
これを最後まで貫き通していれば、それなりの評価だったのですが、なぜか最後は『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)の劣化コピーのようなおセンチなシーンに早変わり。
これにはドン引き。
今まで3時間映画の作り手たちの狂気や汚らわしさを映しておきながら、最後「いや~映画って本当にすばらしいものですね」みたいな〆にするな!
間違いなくデイミアン・チャゼル史上サイテーの映画でした。