『リコリス・ピザ』
原題:Licorice Pizza
2021年製作/アメリカ映画/上映時間:134分/PG12/2022年7月1日日本公開
出演:アラナ・ハイム
クーパー・ホフマン
ショーン・ペン ほか
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などのポール・トーマス・アンダーソン監督による青春ドラマです。
3姉妹バンド「ハイム」のアラナ・ハイムと、アンダーソン監督の多くの作品でタッグを組んだ故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンが主演を務めております。
2022年・第94回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、脚本賞にノミネート。
あらすじ
1973年、ハリウッド近郊のサンフェルナンド・バレー。子役として活動する高校生のゲイリー・バレンタイン(クーパー・ホフマン)は、ある日学校にやって来た写真技師アシスタントのアラナ・ケイン(アラナ・ハイム)に一目ぼれする。「運命の出会いだ」と告白してくるゲイリーを、年上のアラナは相手にせず受け流す。その後、食事をするなど共に過ごすうちに二人は距離を縮めるが、ふとしたことですれ違ったり、歩み寄ったりを繰り返していく。
(シネマトゥデイより)
『マグノリア』でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したほか、カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭の全てで監督賞を受賞しているポール・トーマス・アンダーソン監督が、1970年代のアメリカ、サンフェルナンド・バレーを舞台に描いた青春映画です。
2022年・第96回キネマ旬報外国映画ベストテンで『トップガン マーヴェリック』を抑え1位に選ばれております。
BDにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
アカデミー賞作品賞候補、キネマ旬報外国映画ベストテン1位ということで、かなり前から気になっていた映画で、ようやく鑑賞できました。
まあ、ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画なので、「とんでも」の予感はしておりましたが・・・。
1970年代のロサンゼルス、サンフェルナンド・バレー。
高校生のゲイリー・ヴァレンタインは俳優としても活動していた。そんなある日、ゲイリーは10歳年上の女性と恋に落ちてしまう・・・。
(↑この写真、掲載していいのか悩みました。)
基本、よくあるボーイ・ミーツ・ガールものです。
が、ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画なので、一筋縄ではいかない作風になっております。
10歳年上の女性に一目ぼれしてしまった少年の恋物語が134分。
・・・しかも、主演のお二人には申し訳ないのですが、美男・美女ではありません。
そして、正直演技力も・・・と思ったら、ゴールデングローブ賞では、主演賞候補になっておりました。(汗)
15歳(には見えなかったですが)のゲイリーを演じたクーパー・ホフマンがフィリップ・シーモア・ホフマンの息子さんと言うのは鑑賞後知りました。
まあ、当たり前ですが、本作がデビュー作らしく、全然キャリアが無いので、お父さんには遠く及びません。
これからですね。
実在のハリウッドスターやプロデューサーが描かれております。
ショーン・ペン演じるジャック・ホールデンは『麗しのサブリナ』など、ビリー・ワイルダー監督作品に多く出演したウィリアム・ホールデンがモデルになっております。
そのショーン・ペンが最近インタビューで「ウィル・スミスが逮捕されないのが納得できない。オレは何回も逮捕されているのに」と語られておりました。
まだ言われているウィル・スミスも気の毒に思ってしまいましたが、「あなたと違うでしょ?」と言いたくなってしまいました。
ウィルは妻を侮辱され、ついカッとしてしまったこともあり、もちろん暴力は許されませんが、相手側にも問題があったのも事実です。
マドンナとの結婚式をヘリコプターで上空から撮影しようとしたパパラッチに向かって拳銃ぶっ放したあなたとは違います。
まあ、こちらも相手側に問題が無いとは言えませんが。
ですが、ヘタしたら殺人罪ですよ。
ショーン・ペン同様、少ない出演シーンですが、ブラッドリー・クーパーが登場しております。
役柄はバーバラ・ストライサンドの旦那さんという設定。
私、バーバラ・ストライサンドにあまり(と、言いますか、まったく)関心が無かったので、どういう人かサッパリ分かりませんでした。
日本でも社会現象になったオイルショックが描かれております。
車社会のロスで、ガソリンスタンドでガソリンが買えないことで、ちょっとしたパニックが起こってしまいます。
たしか日本では「トイレットペーパーが無くなる」なるデマが飛び回り、スーパーからトイレットペーパーが無くなる現象が起こった記憶があります。
『インヒアレント・ヴァイス』もそうでしたが、’60年代後半~’70年代初頭を描くのが上手なアンダーソン監督。
その時代をアメリカで過ごしたワケでは無いのですが、その時代のアメリカ映画で観た雰囲気・空気を感じることができる作品になっていたと思いました。
ミステリー小説家の方で、映画レビューをYouTubeで上げている方がキネマ旬報で本作が『トップガン マーヴェリック』(2位)を抑え1位になっていることに「この映画のどこがいいの?」と激怒しておりました。
シンプルな青春恋愛映画と言っていいストーリーなのですが、いろんなテイストを織り交ぜていて、「面白い」、「ロマンチック」な映画には仕上がっておりません。
万人向けするの映画ではありませんが、とにかくキネマ旬報ではアンダーソン監督作品は人気が高く、発表した作品はすべてベストテン入りしております。
同じようにキネマ旬報お気に入りの監督はスピルバーグ、ポン・ジュノ、イーストウッド。
これらの監督の作品もほとんどベストテン入りしております。
アカデミー賞作品賞という視点はどうでしょうか?
この年、2022年・第94回アカデミー賞の作品賞候補は10本。
偶然ですが、すべて本ブログで紹介しております。
最優秀から紹介していきますと、『コーダ あいのうた』、『ベルファスト』、『ドント・ルック・アップ』、『ドライブ・マイ・カー』、『DUNE/デューン 砂の惑星』、『ドリームプラン』、『ナイトメア・アリー』、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、『ウエスト・サイド・ストーリー』、そして本作。
コロナ禍の作品不足もあるかもしれませんが、逆に「よくぞ、本作をノミネートしてくれた」と言った感想です。
全作観た私的な意見では10番目かな~と言った感想です。
ですが、最優秀受賞の『コーダ あいのうた』はノミネートされていない監督賞候補になっているので、アンダーソン監督の手腕は高く評価されているのは間違いないみたいです。
タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に似た、’70年代初頭のロサンゼルスの息づかいが聞こえてくる映画です。
ちなみに本作、レオ様に出演以来していたそうですが、最終的に断られたそうです。(『ワンス~』に雰囲気似すぎなんでね~。同じような映画には出ないでしょう)
何をしても不器用な男の子と女性の恋物語。
不器用はいいのですが、ブサイクとなると、なんとなく「・・・」な気分も。
もの凄く美男・美女にしなくていいのですが、平均くらいにはならなかったかな~?と思ってしまいましたが、「そこがいい!」と評論家に言われてしまいそうです。
エイドクレジットの最後に「ロバート・ダウニー・シニアに捧ぐ」とテロップが出ます。
Jrと名乗っているので、お父さん、かなりの有名人だと思うのですが、私、アイアンマンのお父さん(ハワード・スタークではありません)存じあげないんですよね。申し訳ありません。
アンダーソン監督の映画としては「入門編」と言っていい、初心者に入りやすい映画だと思いました。
私のアンダーソン監督のベストの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』はかなり精神的に打たれ強い方にしか薦められません・・・。(ふたたび汗)