『ナイトメア・アリー』
原題:Nightmare Alley
2021年製作/アメリカ映画/上映時間:150分/G/2022年3月25日日本公開
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:ブラッドリー・クーパー
トニ・コレット ほか
ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作に、『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ監督が、ブラッドリー・クーパーはじめ豪華キャストを迎えて送り出すサスペンススリラーです。
2022年・第94回アカデミー賞において、作品賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞の4部門にノミネート。
あらすじ
1939年、カーニバルのショーを観終わったスタントン(ブラッドリー・クーパー)は、マネージャーのクレム(ウィレム・デフォー)に声をかけられる。そこで出会った読心術師のジーナ(トニ・コレット)に気に入られたスタントンは、彼女の仕事を手伝い、そのテクニックを身につけていく。人気者となった彼は一座を離れて活動を始めるが、ある日精神科医を名乗る女性(ケイト・ブランシェット)と出会う。
(シネマトゥデイより)
1946年に出版された名作ノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作に、野心にあふれ、ショービジネス界で成功した男が、思いがけないところから人生を狂わせていく様を描くサスペンススリラーです。
『アメリカン・スナイパー』などのブラッドリー・クーパー、『ブルージャスミン』などのケイト・ブランシェットをはじめ、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ルーニー・マーラら豪華キャストが出演。
クーパーは製作も兼任しております。
Disney+にて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
『シェイプ・オブ・ウォーター』以来、楽しみにしていたデル・トロ監督の新作ですので、本当に期待値高めでの鑑賞でした。
上映時間の長さが少し気になり、寝かせておりましたが、はたして結果は・・・。
ショービジネスでの成功を夢みる野心にあふれた青年スタンは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座とめぐり合う。
そこで読心術の技を学んだスタンは、人をひきつける天性の才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師となる。しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた・・・。
すばらしい、まさにデル・トロ節満載の世界観で描かれたダークなハードボイルドでした。
ストーリーの情報は一切得ず鑑賞いたしました。
予告編を観て、ファンタジー的要素もあるのかな?と思っておりましたら、少し違う、でも、『シェイプ・オブ・ウォーター』同様、人間の奥底の闇のようなものがしっかり描かれておりました。
ケイト・ブランシェットは上映開始1時間経ってからの登場。
なのですが、主演のブラッドリー・クーパーに負けない存在感。
観終わって、当然アカデミー賞助演女優賞にノミネートされていると思ったら、本作から出演者誰もノミネートされていなくて驚きました。
ヘンな例えなのですが、ここはMLBのイチローさんの成績と似たようなものがあります。
イチローさんも3割打って「当たり前」と思われ続けられました。
ケイトもこれくらいの演技をして「当たり前」と思われてしまうのでしょうね。
むしろケイトが日本の多くの女優さんのような残念な演技をした方が驚きがありますね。・・・って、一言余計だった。
2023年1月9日に米バラエティでケイト・ブランシェットのキャリアを振り返り、ベスト映画13本が選ばれました。(なんで13なんだろう?)
本作は主演では無いにもかかわらず、4位の『キャロル』、5位の『エリザベス』より上の3位に選ばれております。
1位はアカデミー賞最優秀主演女優賞受賞の『ブルージャスミン』でした。
やはり(ヘンタイ趣味とは言え)、ウディ・アレンを侮ってはいけない。
ケイトとルーニー・マーラの再共演は嬉しかったですね。
しかし、アカデミー賞では作品賞ノミネートは当然として、俳優部門全滅以外でも脚色など、もっとノミネートされてもおかしくないと思ってしまいました。
原作は1947年に『悪魔の往く町』というタイトルですでに映画化され、本作はリメイクになります。
オリジナルはまったく知らず、エンドクレジットで「原作があったのか?」と思うほどデル・トロの独特の映像・世界観が映し出されておりました。
ただ、それはタイトル通り、間違いなく”悪夢の小路”。
映画に登場する生きた鶏を食す見世物になった人間。
本来は「愚か者」などの意味があるそうですが、(ここが重要)「騙されやすい者」という意味もあるそうです。
近年ではヲタクを意味する言葉としても使われているそうです。
・・・で、気になったのが、このgeek、翻訳では”獣人”とされておりました。
まさかとは思うのですが、翻訳の松浦美奈さん、「仮面ライダーアマゾン」のファンだったりして。(笑)
どうでもいい余談ですが、私のプロフィールでの名前”patsy(仮称)”も英語で愚か者という意味です。ゲドンの改造人間では無いので”獣人”という意味ではありません。
何も無い平凡な人間があることがきっかけで成功を手にする。
ここで終われば「めでたし めでたし」なのですが、成功を収め頂点に立ったと思ったところ、そこから奈落の底へ堕とされるという姿は人間の貪欲さや残虐さ、そして富に目が眩んでしまう哀れな姿が描かれていて、ドラマはとても重厚な出来になっております。
分かりやすいタイプの映画では無いので、鑑賞後予想通り、日本の映画ファンの一部に不評。
長いことへの不満は仕方ないにせよ、「意味不明。説明不足」という批判に関しては、このような意見を述べる方は、観れば分かることをナレーションで分かりやすく説明してくれるような日本のドラマの鑑賞するのを少し控えるべきでは無いでしょうか?
その意味不明な行動を取っていた主人公がバスに乗り、「ここが終点です」とたどり着いたところがカーニバルを行っている見世物小屋。
ここは観終わったあと感じることですが、「上手すぎる!」と思ってしまいました。
メキシコ人のデル・トロが映し出すアメリカ文学。
観終わってからの感想になりますが、とても興味深く感じました。
第三者的立場だからこその皮肉や毒は観ていて気持ちのいいものではありませんが、映画ファンのひとりとして、正直鳥肌ものです。
デル・トロ曰く、「映画はラスト2分についてのもので、そこまではプロローグ」と語っております。
ブラッドリー・クーパーの最後のセリフは完膚なきまでの凄いもので、トラウマになってしまうかもと思うほど衝撃的でした。
私は幸せとはほど遠い人生を送っていたからか、Happyとは言えない映画ばかりオススメしていて、申し訳なく思うことがありますが、ここまで完成度の高い映画はやはり褒めたいと思いますし、できれば多くの方に観てもらいたいと願っております。
Disney買収後もブレない映画作りをしているサーチライト・ピクチャーズにもあっぱれです!