『TAR/ター』
原題:Tar
2022年製作/アメリカ映画/上映時間:158分/G/2023年5月12日日本公開
監督:トッド・フィールド
出演:ケイト・ブランシェット
ノエミ・メルラン
ニーナ・ホス ほか
『イン・ザ・ベッドルーム』のトッド・フィールド監督が16年ぶりに手がけた長編作品で、ケイト・ブランシェットを主演に、天才的な才能を持った女性指揮者の苦悩を描いたドラマです。
ブランシェットは2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門において、自身2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、2023年・第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞しております。
あらすじ
リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、ドイツの著名なオーケストラで初の女性首席指揮者に任命される。リディアは人並みはずれた才能とプロデュース力で実績を積み上げ、自身の存在をブランド化してきた。しかし、極度の重圧や過剰な自尊心、そして仕掛けられた陰謀によって、彼女が心に抱える闇は深くなっていく。
(シネマトゥデイより)
有名オーケストラで女性として初の首席指揮者となった主人公が、重圧や陰謀といったさまざまな要因により追い詰められていく、ケイト・ブランシェット主演のドラマです。
『恋する遊園地』のノエミ・メルラン、『キングスマン』シリーズのマーク・ストロングらが共演。
2023年・第95回アカデミー賞では作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門でノミネート。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
『イン・ザ・ベッドルーム』の監督&ケイト・ブランシェット主演ということで、公開前から期待度大の映画で、ようやく鑑賞することができました。
昨日の『Gメン』つながりで、キネマ旬報のことも後ほど触れたいと思っております。
世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。彼女は天才的な能力とそれを上回る努力、類稀なるプロデュース力で、自身を輝けるブランドとして作り上げることに成功する。
今や作曲家としても、圧倒的な地位を手にしたターだったが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんな時、かつてターが指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは、追いつめられていく・・・。
本作は2023年・第97回キネマ旬報外国映画ベストテンにおいて第1位。
(2位はスコセッシ監督の『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』)
読者選手外国映画ベストテンでも2位。(1位が『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』)
万人向けとは言えない、正直分かりやすい映画では無い本作が評論家、読者ともに高評価を得ております。
・・・『Gメン』が悪い映画とは少しも思っておりません。
ですが、キネマ旬報の読者となると、この外国映画ベストテンの結果のように、かなりの映画通、マニアとも言えます。
その人たちが選んだ1位には申し訳ないのですが似つかわしくないんですよね~。
映画サイトでの評論家のレビューすらありませんでしたし・・・。
やっぱり不可解だな~。
懐かしい方が出演されておりました。
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)でナチスの手先になるアメリカ人、ドノヴァンを演じたジュリアン・グローヴァー。(現在89歳)
映画出演は10年ぶりみたいです。
ケイト・ブランシェット同様、インディの宿敵を演じた人なので、リディアが最後に指揮する楽曲は「レイダース・マーチ」と期待・・・するワケない。
この作品、評論家の方ですら「何を描いたのか分からない」と言われるほど、本当につかみどころの難しい作品だと思います。
冒頭のインタビューシーンでの男性口調でリディアが同性愛者だということがすぐに分かるのですが、それを強く描いた映画とも違う・・・。
ベルリン・フィル初の女性首席指揮者という設定の女性の社会での地位を描いた映画とも取れる作品です。
クラシック曲にそれほど詳しくないのですが、音楽の美しさや力強さが画面から伝わってきました。
ジュリアード音楽院での教鞭のシーンは圧巻。
長回しで描かれるこのシーンはリディアの本性、そして周囲の人間たちの反応が実に巧く描かれいて、まるで自分がリディアになったかのような気持ちになります。
ジュリアード音楽院でバッハを「女性軽視者」と学生を罵り、また自分好みの女性チェリストをオケのメンバーに選出するなど、時代錯誤のパワハラ全開のリディアの姿が恐ろしく感じます。
レズビアンでありながら国際女性デーも知らない。
彼女の頭の中にあるものは何なのだろうかという、何とも居心地の悪さが続く映画なのですが、とにかく引き込まれる。
それは頂点に立つ人間のプライドや仕事、プライベートが崩れ落ちる姿は弱者的立場の人間が観るとかなり滑稽に映るのかもしれません。
そこまで徹底したトッド・フィールドの演出の凄さ。
なぜヅラなのかは謎でしたが、マーク・ストロングの存在感も良かったです。
音楽の世界だけを描いたように思われるかもしれませんが、現代社会のSNSなどの闇を描いているところも評価できると思いました。
とにもかくにもケイト・ブランシェットです。
完ぺきと言える(らしい)ドイツ語をマスターし、自ら指揮を取った曲はサウンドトラックアルバムに収録されていると、まさに完全に役になりきっておりました。
何の説明も無い、本当に不親切な映画です。
なのに、なぜかのめり込み、この映画の虜になってしまう。
不思議な映画と言えます。
オススメしたいところですが、あまりに観る人を選ぶ作品なので、難しいです。
映画を観て「ストレス溜めたくない」という方は控えた方がいいでしょう。
ですが、あの衝撃的ラストシーンは必見!
観たければ・・・
「迷わず観ろよ、観れば分かるさ。いち、にぃ、さん、タ~!」(どういう〆だ?)