『炎の少女チャーリー』
原題:Firestarter
2022年製作/アメリカ映画/上映時間:95分/G/2022年6月17日日本公開
監督:キース・トーマス
出演:ザック・エフロン
ライアン・キーラ・アームストロング
シドニー・レモン ほか
1984年にドリュー・バリモア主演で映画化されたスティーヴン・キングの小説「ファイアスターター」を新解釈で再映画化した作品です。
火を発生させるパイロキネシスの力を持つ少女と、彼女の力を狙う秘密組織との攻防が描かれます。
あらすじ
生まれながらに火を発生させるパイロキネシスの力を持つ少女チャーリー(ライアン・キーラ・アームストロング)。その能力は成長と共に増し、10代を迎えるころには感情の揺れに呼応して暴走するようになり、彼女自身も制御できなくなってしまう。そんな娘を父アンディ(ザック・エフロン)は周囲から隠し、懸命に守ろうとする。しかし、チャーリーの存在に気付いた秘密組織が彼女を軍事利用すべくスパイを放ち、親子は逃亡する。
(シネマトゥデイより)
スティーヴン・キングの小説を、ジェイソン・ブラムらの製作により再映画化した作品です。
自らの力に困惑する少女を『ブラック・ウィドウ』のライアン・キーラ・アームストロング、その父親を『グレイテスト・ショーマン』のザック・エフロンが演じております。
監督は『ザ・ヴィジル~夜伽~』のキース・トーマス。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
本当は『ジョン・ウィック』4作目を観たかったのですが、ちょっとこの日は3時間の映画は厳しいと思い、前回の記事でアカデミー賞のことに触れたので、今回は今年のゴールデンラズベリー賞に触れたいと思い、昨年何かと物議を醸す結果になった本作(上映時間も『ジョン・ウィック』の半分くらい)を選びました。
アンディとヴィッキーには、生まれながらに不思議な能力を持つチャーリーという娘がいた。彼女が成長するにつれ、その能力は覚醒し始め、多感な10代を迎えるころには、感情の揺らぎに呼応するようになりチャーリー自身もコントロールできないパワーへと変化していきます。
父親アンディはその能力を懸命に隠し続けようとしたが、政府の秘密組織“ザ・ショップ”はついにチャーリーの存在に気づき、軍事利用しようとスパイを差し向ける。逃亡する親子と追跡する工作員。
かくしてチャーリーの特殊能力と秘密組織の壮大なバトルが繰り広げられるのだった―。彼女の持つ能力は果たして神か悪魔か・・・?
最低の映画を選ぶ、第44回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)のノミネーションが先日発表されました。
年間最低の映画に贈られる不名誉な同賞で『エクスペンダブルズ ニューブラッド』がワースト映画賞、助演女優賞(ミーガン・フォックス)助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)など最多7部門で候補に。
その他のワースト映画賞候補が『エクソシスト 信じるもの』、『MEG ザ・モンスターズ2』(ジェイソン・ステイサム、愛されております)、『シャザム!~神々の怒り~』、『プー あくまのくまさん』。
ワースト主演男優賞に(作品名省略)、ラッセル・クロウ、ヴィン・ディーゼル、クリス・エヴァンス、ジェイソン・ステイサム、ジョン・ヴォイト。
ヴィン・ディーゼル(『ワイルドスピード ファイヤーブースト』で候補に)は正直、『プライベート・ライアン』以外でいいと思ったことが無いので、まあ妥当かなと思いました。(映画を観ていないのに偉そうなこと書いてすみません)
ジェイソン・ステイサムは『エクスペンダブルズ~』では無く『MEG ザ・モンスターズ2』で候補に。
ワースト主演女優賞に(作品名省略)、アナ・デ・アルマス、ミーガン・フォックス、サルマ・ハエック、ジェニファー・ロペス、ヘレン・ミレンが候補に。
アナ・デ・アルマス(写真)、も愛されちゃってますね~。
さらにミーガン・フォックスは主演女優・助演女優の2部門でノミネーション。
ヘレン・ミレンは『シャザム!~神々の怒り~』でのノミネーションですが、主演なのでしょうか?
助演女優賞(作品名省略)に、キム・キャットラル、ミーガン・フォックス、バイ・リン、ルーシー・リュー、メアリー・スチュワート・マスターソン。
助演男優賞にマイケル・ダグラス、メル・ギブソン、ビル・マーレイ、フランコ・ネロ、シルヴェスター・スタローン(何か凄い豪華なメンツ)が候補になっております。
もうスタローンはあまりの常連過ぎるので、殿堂入りでいいような気がしますが・・・。(まあ、スタローンをイジるために存在する賞と言っても過言ではないので仕方ないか)
ワースト・リメイク/パクリ/続編賞候補に『エクソシスト 信じるもの』、『アントマン&ワスプ:クワントマニア』、『エクスペンダブルズ ニューブラッド』、『インディ・ジョーンズと運命のダイアル』、『プー あくまのくまさん』。
昨年は特に気にすること無く候補作を見ており、「『モービウス』ってそんなに酷かったかな~?」と思ったくらいでしたが、日本人YouTuberの方のレビューも散々で、「自分の感性、ぶっ壊れているのかも・・・」と思ってしまいました。(汗)
ワースト映画賞に輝いたアナ・デ・アルマス主演の『ブロンド』は受賞後鑑賞いたしましたが、たしかに残念な映画ですが、日本映画ではこれよりもっと残念な作品ありますし、アナ・デ・アルマスはアカデミー賞主演女優賞の候補になるほどの演技を披露していたので「すべてがダメ」ということは無かったと思います。
・・・ですが、本年度に関しては、ノミネーションの段階でかなり文句言いたくなりました。
『エクスペンダブルズ~』はまったく興味なく、配信開始されても観ることは無いと思うのでいいのですが(鑑賞された日本の映画ファンも酷評多かったですね)、気になったのが『シャザム!~神々の怒り~』がワースト映画賞にノミネート、しかし『アントマン&ワスプ:クワントマニア』はリメイク/パクリ/続編賞候補の方に。
『シャザム!~神々の怒り~』はそれほど期待せず観たこともありますが、年間最低の5本に入るほど悪いとは少しも思わず(日本ではラッパーで映画紹介をされている宇多丸さんも大絶賛しておりました)、ヘレン・ミレンの主演女優賞の候補というのも、少し意地悪な印象を受けました。
オスカー俳優や高額なギャラを手にするハリウッドスターがそれに似つかわしくない作品に出演すると、必ずと言っていいほどノミネートされます。
今回のヘレン・ミレンもそのおひとりだと思います。
そして、すべての映画スターや俳優さんが鋼の心を持っているワケでもありません。
神戸出身の映画評論家の猿渡由紀さんの記事ですと、数年前、トム・クルーズのグループ取材のとき、ある記者が『宇宙戦争』のラジー賞受賞の感想を聞いたとき、トムがムッとした表情になり、「あれはネガティヴで嫌いだ」と話し、場が重い空気になったそうです。
軽いジョーク的な気持ちから始まったと思われるラジー賞ですが、今回で44回目。
今の社会、イジメやハラスメントというものが取り上げられることも多い中、「もうジョークでは済まないのではないか?」と思うことが多いです。
昨年は今回紹介する『炎の少女チャーリー』の主演女優のライアン・キーラ・アームストロングを当時12歳でワースト主演女優賞候補にして、批判を受けノミネートを撤回、ラジー賞創設者が謝罪するというお粗末なことも起こっております。
酷いシナリオや演出、編集で俳優の演技が殺されてしまうことは多いと思います。
しかも、ノミネーションされるメンツも毎年同じような人と、ラジー賞に愛されている(?)俳優ばかりで、顔ぶれ見ただけで正直飽きてきました。
ラジー賞も米バラエティ同様、作品だけでいいような気がしてきました。
そして、『シャザム!~神々の怒り~』では無く、『アントマン&ワスプ:クワントマニア』をワースト映画賞候補にしてください。
最低なヒーロー作品はどちらか?
誰もが分かりきったことです。
では作品の感想を。
本当にチープなシナリオとCGに驚いてしまいました。
ですが、調べてみると本作は昨年のラジー賞ワースト映画賞の候補5作品には選出されておりませんでした。(ワースト・リメイク/パクリ/続編賞には候補入り)
作品は候補にならないで主演の12歳の女優さんを候補にしたとなったら、それは世間から批判されても仕方ないと思いました。
先ほども書きましたが、酷いシナリオの下ではどんなに俳優が頑張ろうといい映画になることは不可能に近いです。
以前は子役でもギャラ貰っているならプロと思っておりましたが、今回は謝罪・撤回は正解だったと思いました。
かなり昔ですが、『ファントム・メナス』でアナキン演じた子役を候補にして、その少年が実生活でもダークサイドに堕ちてしまったことがありましたし・・・。
パイロキネシス(念動放火)を持つ超能力少女、チャーリーのその「手にしてはならなかった」と言える能力に苦しむ・・・ような描写も無く、むしろその能力を楽しんで使っていて嫌いな大人や同級生を懲らしめる姿は「これ、ホラー映画?」と思ってしまうほどでした。
キング原作の映画では、こうした「(本人が)望まなくして手にしてしまった能力」的な作品(『キャリー』や『グリーンマイル』など)が多くあります。
ある意味サム・ライミ版『スパイダーマン』と共通するものもあると思います。
そのような能力を持ってしまった悲哀などがまったく描かれず、キング原作の映画として観ても、その(原作の持つ)良さが感じられない映画になってしまっておりました。
余談ですが、そのジャンルのキング原作の映画では『デッド・ゾーン』(1983)というデヴィッド・クローネンバーグ監督作品がオススメです。
説明不足なところが多く、よく分からないのですが、政府の人体実験のようなもので特別な力を手にしてしまったカップルの間に子どもが生まれ、その遺伝子から炎を起こす力を持ってしまった・・・。
その能力を軍事利用しようとチャーリーを狙う秘密組織なのですが、その前に己を鍛えろと言いたくなるほどあまりにも弱い、弱すぎる。
怖さも無ければ、無理矢理入れたような親子の描写や、超能力を持つチャーリーが植物人間になってしまった女性の心の声を聞くなどのエピソードはどれも薄味で物足りないものばかりでした。
ザック・エフロン、相変わらず「・・・」ですね。
1984年のドリュー・バリモア版では「少女のいたいけさ」みたいなものが描かれていたそうなのですが、本作ではそれも無し。
自分を引っ掻いたネコちゃんを黒こげにしちゃうところはビックリでした。
あるレビューで「ネコより先にシナリオを焼き払え」とありましたが、まさにその通り!
せめて敵側にも超能力者がいて、両者の能力合戦(キングらしくは無いですが)みたいなものでもあれば面白味もあったのですが・・・。
ラストの意味不明なシーンも含め褒めるところが無く、1984年のドリュー・バリモア版で激怒していたキングも今回だんまりなのは、「もうオレのこの小説は映画化しないで」という無言のメッセージだったのかもと思ってしまいました。
少女の悲しさも描けていなければ、残虐性も描ききれていない。
せめて、どちらかでもしっかり描かれていればと思うと残念な作品です。
『デッド・ゾーン』、『グリーンマイル』がいかにすばらしい映画だったか認識させてくれる作品でした。
第44回ゴールデンラズベリー賞授賞式はオスカーナイト前日の日本時間3月10日に開催されます。