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『ミッドサマー ディレクターズカット版』

『ミッドサマー ディレクターズカット版』

原題:Midsommar: The Director's Cut

 

2019年製作/アメリカ映画/上映時間:170分/R18+/2020年3月13日日本公開(オリジナル版は2020年2月21日)

 

監督:アリ・アスター

出演:フローレンス・ピュー

   ジャック・レイナー

   ウィリアム・ジャクソン・ハーパー ほか

 

長編デビュー作『へレディタリー/継承』で注目されたアリ・アスターが監督と脚本を務めた異色ミステリーのディレクターズカット版です。

オリジナルの劇場公開版ではカットされた未公開シーンを23分追加し、上映時間は2時間50分に。日本における映倫区分はR15+からR18+(18歳以上が鑑賞可)に。

スウェーデンの奥地を訪れた大学生たちが遭遇する悪夢が映しだされます。

 

※ここから、あらすじや予告編などのデータや映像はオリジナル版のものを転載いたします。※

 

あらすじ

 

思いがけない事故で家族を亡くした大学生のダニー(フローレンス・ピュー)は、人里離れた土地で90年に1度行われる祝祭に参加するため、恋人や友人ら5人でスウェーデンに行く。太陽が沈まない村では色とりどりの花が咲き誇り、明るく歌い踊る村人たちはとても親切でまるで楽園のように見えた。

シネマトゥデイより)

 

『ヘレディタリー 継承』で高い評価と注目を集めたアリ・アスター監督の長編第2作で、スウェーデンの奥地を舞台に描いた異色スリラーです。

主演は『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたフローレンス・ピュー。

ローズの秘密の頁(ぺージ)』などのジャック・レイナー、『メイズ・ランナー』シリーズなどのウィル・ポールターらが共演。

 

Netflixにて鑑賞。

初めての鑑賞になります。

 

こちらも見放題終了間際・・・と言いますか、配信終了が3月15日だったので、鑑賞開始時刻が20:40と本当にギリギリでの鑑賞になりました。

Amazonプライムビデオではまだオリジナル版は観れるのですが、せっかくなので上映時間の長いディレクターズカット版をと思いました。

 

家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。

 

美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。

しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖・・・それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

 

不慮の事故で家族を失った女子大生がスウェーデンの奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」に参加するため、現地を訪れ、とんでもないことに遭ってしまうというA24製作のスリラー映画です。

 

かなり残虐なシーンやグロやエロもありましたが、奇妙ではありますが、その悪夢であるはずの地には、どこか安らぎのような”温かさ”が感じられた気がいたしました。

 

よく本作を「胸クソ映画」などと評する人が多いですが、自分はそうは感じませんでした。

自分が変人で村人に近い存在だからかもしれません。(だったら嫌だな?)

そうでは無く・・・

 

人間とは死というものから逃れられない。

ならば、それが近い老人は自らその逃れられない宿命を受け入れ、そして「生まれ変わり」のようなものを信じ、新たな生命の誕生を祈り自決する。

老害大国の日本は見習わなければならない(・・・いや、見習っちゃダメでしょ)ある意味理にかなった考えのようにも感じました。

まあ、木槌使うところはさすがにビックリでしたが・・・。

 

このスウェーデンの小さな村の伝統的行事は現代社会の視点から考えると、決して許さない残虐で野蛮な行いです。

ですが、村では何百年もその行事は続けられ、それが当たり前のものになっております。

簡単に言ってしまえば、異なる文化と考え方の違いです。

 

その村の伝統行事にやってきたアメリカ人の5人組。

”郷に入っては郷に従わない”アメリカ人を皮肉るかのように、その村の伝統や風習に背く行為をしてしまう描写は強烈なブラック・ジョークのように感じられました。

単なる枯れ木だと思って、そこにおしっこしてしまった青年。

しかし、その木には長年神が宿っていて、そんな神聖なところに排せつしたことに怒り、嘆き、悲しむ村人。

この対比が面白い、不謹慎な言い方ですが・・・。

当然、おしっこしてしまった青年は天罰が下ります。

 

観ていて不快にされ、そして楽しませる作品を作れるのがA24という映画会社の強みかもしれません。

監督もその期待(?)に応えるかのような描写を次々と連発します。

 

ですが、この悪夢のような作品からすばらしい”美”を感じさせられるもの事実です。

村人の着ている衣装のデザインや壁面の絵画は目を見張るものがあったと思いました。

 

そして、何と言ってもフローレンス・ピューでしょう。

とても難しい役柄でしたが、ビックリするほどハマっていて、見事演じておりました。

今年のアカデミー賞授賞式でもプレゼンターとして登場しておりましたが、今や間違いなくハリウッドの若手トップクラスの女優だと思います。

 

村人を演じた人たちの演技も圧巻でした。

まさか『ノマドランド』のように、ホンモノのスウェーデンの村の人を起用したとは思えないので、皆さん俳優だと思うのですが、完全に変人村人になりきっておりました。

 

ディレクターズカット版で増えているシーンはオリジナル版を観ていないので分かりませんが、両方ご覧になられている方のレビューによると、”あのシーン”(ご覧になられた方は分かると思いますが)のモザイクが消えていたとありました。

 

Netflix配信版もモザイクはありませんでした。

う~ん、あのシーンにモザイクかけると、画面いっぱいになってしまうので、オリジナル版でもそのようなことはやめてもらいたかったと思ってしまいました。

そんな行いしていると、この村人たち、黙っていないと思いますよ。(笑)

 

「胸クソ映画」的には自分は本作より『ビバリウム』や『ザ・メニュー』の方が強いと思います。

本作も決して気分の良くなる映画ではありませんが、死と生の隣り合わせ、死は新たな命を宿らすものであり、そのためには”種”が必要。

すなわち村人、そして人間が持つ「生存していくための知恵」が(悪い意味で)見事に映し出されていたと思いました。

 

不慮の事故で家族を失ったダニー。

なぜ彼女がこの村へ訪れたのか?

そして、彼女が”女王”なれたのは?

 

それは偶然では無く、必然だったのでは無いかと自分は思っております。

心の闇から解放されるラストシーン、ここのフローレンス・ピューの演技は絶品です!

 

ホラー映画だと思って観てしまいましたが、本作は生命や心の再生、または心温まらないラブストーリーとも考えられる、強烈なブラック・コメディと言える作品かもしれません。

最高でした。

監督の前作、ぜひ観てみたいです。