『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
原題:Little Women
2019年製作/アメリカ映画/上映時間:135分/G/2020年6月12日日本公開
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン
フローレンス・ピュー ほか
ルイザ・メイ・オルコットの自伝的小説「若草物語」を新たな視点で映画化したヒューマンドラマです。
2020年・第92回アカデミー賞において、作品賞、主演女優賞(シアーシャ・ローナン)など計6部門にノミネートされ、最優秀衣装デザイン賞を受賞。
あらすじ
しっかり者の長女メグ(エマ・ワトソン)、アクティブな次女ジョー(シアーシャ・ローナン)、ピアニストの三女ベス(エリザ・スカンレン)、人懐っこくて頑固な四女エイミー(フローレンス・ピュー)、愛情に満ちた母親(ローラ・ダーン)らマーチ一家の中で、ジョーは女性というだけで仕事や人生を自由に選べないことに疑問を抱く。ジョーは幼なじみのローリー(ティモシー・シャラメ)からの求婚を断って、作家を目指す。
(シネマトゥデイより)
南北戦争下の姉妹の物語を、作家を夢見る次女の視点で描いた、世界的有名小説の映画化作品です。
同作でガーウィグ監督と組んだシアーシャ・ローナンとティモシー・シャラメ、『ミッドサマー』などのフローレンス・ピューのほか、エマ・ワトソン、メリル・ストリープらが出演。
BDにて鑑賞。
映画館に次いで、2度目の鑑賞になります。
本日、6月22日はメリル・ストリープ、74歳のお誕生日です。
お祝いの気持ちを込めまして作品を・・・と思ったのですが、メリルも配信されている新作はほとんど観ていて、過去作もほとんど観ているので、2回目以降の作品で「もう一度観たい」と思う作品として『プラダを着た悪魔』の4回目か本作のどちらかをと思い、最終的に本作にいたしました。
理由は後ほど。
19世紀、アメリカ、マサチューセッツ州ボストン。マーチ家の四姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミー。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかってばかりの次女ジョーは、小説家を目指し、執筆に励む日々。自分とは正反対の控えめで美しい姉メグが大好きで、病弱な妹ベスを我が子のように溺愛するが、オシャレにしか興味がない美人の妹エイミーとはケンカが絶えない。
この個性豊かな姉妹の中で、ジョーは小説家としての成功を夢見ている。ある日ジョーは、資産家のローレンス家の一人息子であるローリーにダンス・パーティで出会う。ローリーの飾らない性格に、徐々に心惹かれていくジョー。
しかしローリーからプロポーズされるも、結婚をして家に入ることで小説家になる夢が消えてしまうと信じるジョーは、「私は結婚できない。あなたはいつかきっと、もっと素敵な人と出会う」とローリーに告げる。
自分の選択でありながらも、心に一抹の寂しさを抱えながらジョーは小説家として自立するため、ニューヨークに渡る・・・。
メリル・ストリープも74歳です。
お祝いの記事は昨年、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』で書きましたので、プロフィール等はそちらを見ていただければ光栄です。
本作での登場シーンは10分くらいです。
それでもインパクトを与える演技力はさすがです。
HappyBirthday!
ルイザ・メイ・オルコットの自伝的小説「若草物語」。
これまで数多く映像化されており、映画だけでも1910年代から数えると、本作で7回目の映画化になります。
ほかにもテレビドラマ、日本ではアニメーション、漫画にもなっております。
それらの作品で一番有名なものは、1949年に製作されたエリザベス・テイラーが出演したものだと思うのですが、残念ながら未見。
1987年に放映された世界名作劇場のアニメーション「愛の若草物語」も観ておりません。
唯一観ていたのが、1994に映画化されたウィノナ・ライダー主演の作品だけです。
あまり内容は覚えておらず、まだブルース・ウェインを演じる遙か昔で、『太陽の帝国』の子役だった人・・・と驚いたクリスチャン・ベイルが出演していたことが印象に残っていた程度でした。
コロナ禍で若干公開延期になりながら、大好きなシアーシャ・ローナン主演とアカデミー賞作品賞候補ということで、楽しみで映画館へ足を運びました。
ですが、最初に観た感想は「若草物語って、こんな話しだったっけ?」、「ちょっと退屈だったな」と否定的で本作が評価されている理由を今ひとつつかめないでおりました。
その疑念に追い打ちを掛けるものが、翌年発表された2020年・第94回キネマ旬報外国映画ベストテンで本作が4位にランクインしたこと。
この年のキネ旬の外国映画ベストテンは1位『パラサイト 半地下の家族』、2位『はちどり』と韓国映画が上位独占。
3位がフランス映画の『燃ゆる女の肖像』なので、アメリカ映画では年間ナンバーワンと言えます。
キネ旬の評論家は男性がほとんどだと思うので、女性にしか受けない映画では無いと思い、「機会があればもう一度観てみようと」と思っておりました。
そして、2度目の鑑賞。
たしかに、良くできている。
・・・などという言葉だけでは表現できないほど、映画の世界にのめり込み、圧倒され心揺さぶられました。
なぜ、今「若草物語」なのか・・・では無く、今の時代だからこその「若草物語」として製作された映画のように思いました。
映画はアップデートされ、本来の原作とはかなり違い、ファンには不満の方もいらっしゃるようですが、「このキャラクター像、この物語でなければ伝えられない」メッセージが込められていたように感じました。
言葉は悪いですが、まだ男性のお尻に敷かれていた女性が多かった時代。
女性の社会進出などほんの一握りで、ほとんどの女性は結婚(できればお金持ちの相手)が最高の幸せと思われていた時代。
そんな性別のハンディキャップがありながら、ジョーは自分の小説を売り込もうと必死になります。
この姿がすばらしく、観ていて応援したくなります。
本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたフローレンス・ピュー。
『ミッドサマー』で注目される前の作品ですが、こちらもいい演技を披露していたと思いました。
少しポッチャリ系ですが、そこもチャーミングでした。
ティモシー・シャラメに関しては、「彼のキャリアベスト」と呼べるほどの魅力を振りまいていたように思いました。
「フェミニズム」とは女性の権利を主張する行為を意味するそうですが、それを押しつけがましく描くことはせず、あくまでひとりの女性の力強さや優しさ、そして成功を掴む姿を美しい映像で綴った、大傑作でした。
映画館での鑑賞のときは、自分の心のどこかに「女性映画で女性向き」という敷居を勝手に敷きながら観ていたのかもしれません。
今回はストリープの誕生日祝いという気持ちで観たからか、「なんて心が洗われる美しい映画なんだろう」という素直な気持ちで鑑賞できました。
”幸せ”は人それぞれだと思います。
しかし、待ったいても幸せは訪れない。
それは時代も性別も関係ないことだと思います。
そのメッセージをイヤミ無く描いたグレタ・ガーウィグの演出に拍手です。
シネマトゥデイの評論家の短評で9人のうち8人が賞賛しておりますが、お一人、女性の方だけ否定的な意見というのも、ある意味面白いです。
新しい試みで「若草物語」を描くことを前提に作られていると思うので、時間が過去と現在、行ったり来たりしている描き方は少し混乱してしまうことも事実だと思います。
100年前から変わらないこと。
100年前と変わったこと。
もし今、ルイーザ・メイ・オルコットが生きていたら、この名作小説は誕生していたのか?
また、彼女はどんな人生を選んだのだろうか?
そんなことを考えてしまいました。
女性に限らず、観る人すべてに勇気を与えてくれる映画だと思います。
映像、美術、音楽、衣装、そして俳優、すべてが美しいです!
シアーシャ・ローナンにオスカー、獲って欲しかったな~。
レニー・ゼルウィガーですか・・・?(彼女あんまり好きじゃないんですよね~。個人的感情は挟まない方がいいですが)