『神は見返りを求める』
2022年製作／日本映画／上映時間：105分／G／2022年6月24日日本公開
監督：吉田恵輔
出演：ムロツヨシ
若葉竜也 ほか
ムロツヨシと岸井ゆきの演じる男女の本音と建前や嫉妬と憧れを描いた、『空白』の吉田恵輔監督オリジナル脚本による異色恋愛ドラマです。
あらすじ
イベント会社で働く田母神尚樹（ムロツヨシ）は、YouTuberの川合優里（岸井ゆきの）と合コンで出会う。再生回数の少なさに頭を悩ませる優里に同情した田母神は、彼女のYouTubeチャンネルを見返りを求めることなく手助けする。人気が出ないながらも彼らは前向きに努力を続け、お互い良きパートナーになっていくが、あることをきっかけに二人の関係が大きく変化する。
（シネマトゥデイより）
『空白』などの吉田恵輔監督が脚本も手掛け、YouTuberを題材に描くラブストーリーです。
見返りを求めない優しい男性とどん底YouTuberの関係を映し出します。
Amazonプライムビデオにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
吉田恵輔監督作品＆『ケイコ 目を澄ませて』の岸井ゆきのさん出演と言うことで、かなり楽しみにしての鑑賞になりました。
イベント会社に勤める⽥⺟神（尚樹）は、合コンでYouTuber・ゆりちゃん（川合優⾥）に出会う。⽥⺟神は、再⽣回数に悩む彼⼥を不憫に思い、まるで「神」かの様に⾒返りを求めず、ゆりちゃんの YouTubeチャンネルを⼿伝うようになる。
ふたりは、⼈気がでないながらも、⼒を合わせて前向きに頑張り、お互い良きパートナーになっていくが…あることをきっかけに、⼆⼈の関係が豹変する・・・。
『犬猿』、『空白』と人間の持つダークな一面とそれを隠そうとするうわべのようなものを巧みな演出で描いてきた吉田恵輔監督。
その吉田監督の新たな傑作がまた誕生いたしました。
吉田監督がYouTubeやYouTuberにあまりいい印象を持っていないような感じがいたしました。
それに関しては人それぞれなので、自分は気にすることは無かったのですが、YouTubeが好きな方、YouTuberである方には「古臭い考え」、「気に食わない」と思われるかもしれません。
ただ、吉田監督が伝えたかったことと思われるものは、YouTuberは動画再生回数、いいねなどの数と言ったものを求めて活動されております。
そこに人間と人間とのコミュニケーションというものが存在しないのでは無いかという警鐘を鳴らしていたように自分は感じました。
売れないYouTuberのOL優里と偶然知り合った中年男性の田母神は、イベント会社勤務をしていて、その小道具などを優里に提供し、彼女のYouTube作りに強力することになります。
動画の文字入れなど、それこそ無償の援助で優里を売り出そうと奮闘する田母神。
しかし、ふとしたことから優里がぷちブレイクし、売れっ子になってしまいます。
若手デザイナーなどの取り巻きを作り、すっかりスター気取りの優里。
すると、今まで助けてくれた田母神はオヤジ臭く邪魔な存在になり、徐々に距離を置くことに・・・。
「オレは見返りを求めない」と言っていた田母神はブチ切れ。
「誰のおかげで売れるようになったんだ」と言いだし、それに反発する優里。
”見返りを求める男”と”恩を感じない女”のどうしようもないバカ騒ぎが始まります。
ここからの展開が吉田監督作品が好きな人にはたまらない。
偶然ですが、岸井ゆきのさんの『ケイコ 目を澄ませて』のとき、『ロッキー』でスターになったシルベスター・スタローンへの批判を書きました。
それと同じことが本作で描かれております。
スターになる人間。
もちろん、その人の努力や才能がありますが、決してひとりの力でその座にたどり着くことはできないと思います。
周囲の人の助力が無ければ、成功への道は開かれないと言えます。
本作の優里もスタローンもそのことを忘れ、あたかも自力だけで天下を取った気でいるところが嫌～ですね。（スタローンのファンの方、ごめんなさいね）
超売れっ子YouTuberになった優里に対抗して、”ゴッティー（GOD.T）と名乗りYouTuberになる田母神。
自撮り棒でのチャンバラシーンはかなり笑えました。
また、本当に悪いヤツは誰なのか？
そこを上手く描いているところがいいですね。
ムロツヨシさんがいいですね。
これまでは、それほど「良かった」と思うことが少なかった俳優さんでしたが、本作の演技は本当に観る人を惹きつけるものがありました。
岸井ゆきのさん。
『ケイコ 目を澄ませて』と本作の演技で、すでに日本映画界ナンバーワン女優に決定したと（勝手に）確信いたしました。（笑）
『ケイコ～』は一切笑わない役でしたが、本作はかなり笑顔のシーンもあり、また違った魅力を発見したように思いました。
動画再生回数のために、とんでもないことが実際にも起きております。
人はなんのため、なにと向き合わなければいけないのか？
そのような定義を投げかける大傑作です。
オススメしたいですが、胸クソ映画で後味がよろしいとは言えないところがありますので、スカッとしたい方はパスされた方がいいかも・・・。
吉田恵輔監督、次回作が楽しみですね。
ご本人、冗談でご自身を「巨匠」と言ったそうですが、本当にその域に達したように感じます。
