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『ホムンクルス』

ホムンクルス

 

2021年製作/日本映画/上映時間:115分/PG12/2021年4月2日日本公開

 

監督:清水崇

出演:綾野剛

   成田凌

   岸井ゆきの ほか

 

殺し屋1」などで知られる山本英夫の同名コミックを映画化した作品です。

ある手術を受けたホームレスが、それを機に他人の深層心理を視覚化して見ることが可能になる姿が描かれます。

 

あらすじ

 

記憶と感情をなくした状態で、高級ホテルとホームレスがひしめく公園のはざまで車上生活を送る名越進(綾野剛)。そんな彼の前に医学生の伊藤学(成田凌)が現れ、頭蓋骨に穴を開け第六感を芽生えさせるトレパネーション手術を報酬70万円で受けないかと持ち掛ける。手術を受けた名越は、右目だけをつむると人間が異様な形に見えるように。伊藤は異形たちをホムンクルスと名付け、他人の深層心理が視覚化されて見えているのだと説明する。

シネマトゥデイより)

 

山本英夫のコミックを、『カラオケ行こ!』などの綾野剛を主演に迎えて実写化したミステリーです。

監督を務めるのは『犬鳴村』などの清水崇

共演に『くれなずめ』などの成田凌、『神は見返りを求める』などの岸井ゆきのに加え、石井杏奈内野聖陽ら。

 

Netflixにて鑑賞。

初めての鑑賞になります。

 

本日、2月11日は皆さんご存じのとおり、建国記念日ですが、女優の岸井ゆきのさん、32歳のお誕生日でもあります。(今月お誕生日の俳優さん多いのでこのネタ増えると思います)

お祝いの気持ちを込めまして、今回は出演作品を選ばせていただきました。(・・・ただ、この映画評判悪かったんですよね。清水崇監督では仕方ないのですが)

 

お誕生日、おめでとうございます。

 

一流ホテルとホームレスが溢れる公園の狭間で車上生活を送る名越進。ある日突然、医学生・伊藤学が名越の前に現れます。

 

「記憶ないんですよね?」、そして期限7日間、報酬70万円を条件に第六感が芽生えるという頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション手術を受けることになった名越。術後、名越は右目を瞑って左目で見ると、人間が異様な形に見えるようになります。

 

その現象は、「他人の深層心理が、視覚化されて見えている」と言う伊藤。そして彼はその異形をホムンクルスと名付けます。

 

果たして名越が見てしまったものは、真実なのか、脳が作り出した虚像の世界なのか?そして、その先に待っている衝撃の結末とは・・・?

 

本作の原作が小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」掲載。

と、言うことで、今問題になっているコミックの映像化に関してのあくまで私の私見を述べさせていただけたらと思っております。

あくまで私見です。

ただ、今回のことで一人の命が失われていることを重く受けとめなければならないと思っております。

 

近年の日本映画のほとんどが原作もの、特にコミックが原作の作品が多いです。

本作もその1本。

テレビドラマはほとんど観ませんので、風のウワサで知る程度ですが、オリジナルのものより、映画同様原作ものが多いように聞いております。

ここで一番重要視されるのが、出版社、原作者、そして映像の作り手(映画会社やテレビ局など)との間で、どのような契約が結ばれたかだと思います。

 

真っ白な紙にハンコを押す人はいないので、こと細かに書かれている契約書を隅々まで把握してハンコを押すべきなのですが、法律のプロで無い限り、それはかなり不可能だと思います。

アメリカではエージェントというその道のプロが存在し、契約書(映像化権利やスポーツ選手の年俸など)を十分把握し、もし依頼人に不利益な項目があれば、それを削除するよう提案することができます。

今回のテレビドラマの場合、どのような契約だったのが興味あります。

 

亡くなられた方がいらっしゃるのに、この表現は不適切かもしれませんが、原作は食品で言えば、農家の方が生産された野菜、映像の作り手(脚本家や演出家)はその食材を調理してお店に出す調理人のようにも思えます。

これも契約書の内容によりますが、生産者=原作者がどこまで調理人=ドラマ製作者にもの言えるかです。

生産者は「この野菜は新鮮なので生で提供してほしい」と願っても、もう売ってしまったものであれば、調理人が煮ても焼いても勝手と思われても仕方ない場合があります。

 

また、大切だったのは原作者とシナリオライターとの連携だと思いました。

ここで、また自分のヲタク知識のひけらかしになってしまいますが、1977年に放映された石ノ森章太郎先生原作の「快傑ズバット」。

この作品はキャラクターデザインと大まかな筋書きは石ノ森先生が担当されておりますが、細かな物語は本作のシナリオを担当した名脚本家の長坂秀佳先生の手がけたものになっております。

これは「人造人間キカイダー」など、これまで石ノ森先生の作品の世界観を壊すことなく再現させた長坂先生の手腕を石ノ森先生は信頼していたからだと言えます。

また、映画『ハリー・ポッター』シリーズで原作者のJ・K・ローリングはシナリオを担当するスティーヴ・クローヴス(シリーズ5作目の『不死鳥の騎士団』のみ別の人が書かれております)に絶対的な信頼をして、まだ未発表だったその後の展開をクローヴスにだけ教えていたという話しもあります。

どちらの作品も原作の世界観を壊すことが無かったのは作者と脚本家の連携と信頼があってこそだと言えます。

 

・・・では、法律にうるさいアメリカ映画、ハリウッド作品は何ごとも無かったのかと言えば、そのようなことはございません。

最悪のものは観ていないで書くのもあれ・・・なのですが、観るまでも無く「酷すぎ、違う!」と思った「ドラゴンボール」のハリウッド実写版。

あれじゃ鳥山明先生怒りで超サイヤ人3になっちゃうと思ってしまいました。

 

それ以外で有名なものは1980年のスタンリー・キューブリック監督、スティーヴン・キング原作の『シャイニング』。

かなり原作を改変している映画ですが、これに関しては双方巨匠なので、お互い譲らない展開で手がつけられない大げんかになってしまいました。(汗)

 

キング原作の映画はあまり出来のいいものは少なく(『シャイニング』は映画ファンには高評価でしたが)原作の良さが映像化されないと嘆くものも多かったのですが、そのキングも感動した1986年の『スタンド・バイ・ミー』。

これはキングの半自伝的作品の短編をロブ・ライナー監督が映画化したハリウッド映画では比較的低予算の映画でしたが、キングが「原作よりすばらしい」と大絶賛。

原作のタイトルは「BODY(死体)」でしたが、映画公開後は「スタンド・バイ・ミー」に変えているほどです。

 

お茶の間(←この言葉も死語かもしれない)の娯楽がテレビだった時代、もっとオリジナルのドラマが多かった記憶があります。

山田太一先生、倉本聰先生、市川森一先生。

すばらしい物語を手がけるシナリオライターの方が多くいらっしゃいました。

それらの人をないがしろにしたのもテレビ局。

そのしっぺ返しが現在のドラマ離れを生み出しているかのようにも思えます。

 

長谷川町子先生はテレビアニメ「サザエさん」に関し、「あれはもう私の作品では無い」と言っております。

映像化権を売ってしまったら、もう自分の作品では無いという考えもあると思います。

 

現在放映中の宮藤官九郎先生脚本の「不適切にもほどがある」というドラマ。

とても面白そうで(Netflixでも配信中)観てみたいと思っているのですが、今の時代、テレビの規制が厳しく、本当に描きたいものも問題視されてしまう世知辛いご時世になってしまったこともテレビ業界の悲劇とも言えます。

昔観ていた昭和のヒーロー作品やアニメも今は絶対放映NGのものも多いです。

 

そんなご時世に合わせた色に塗り替えられてしまう原作。

それに不服な原作者も多いと思います。

明確な答えの無いナーバスな問題なので、「これがベスト」という意見が言えませんが、とにかく原作者とシナリオライターの連携が大切なように思います。

どこまでなら改変できるのか?

それを十分話し合える場が必要だと思いました。

そして、このような悲劇を二度と起こしてはいけない。

それだけは断言できます。

 

最後に余談ですが、数多くの名作のシナリオを手がけ、多くのお弟子さんを生み出した長坂秀佳先生、ご自身の最高傑作は「快傑ズバット」と明言しております。

 

ようやく映画の感想です。

レビューの多くは原作のファンの方で、「山本先生、なんで許可したんですか!」と嘆いていらっしゃる方の意見が印象的でした。

映像化の難しさ。

それが本作でも現れていると言えるかもしれません。

 

・・・ですが、原作未読の私の意見は、清水崇監督でこれくらいの出来なら、まずまずではないかと(褒めてはおりません)思いました。

かなり綾野剛さんにおんぶに抱っこの映画ではありましたが・・・。

 

誰もが抱えている悩みやトラウマ。

それらが視覚化して見えてしまう現象。

設定はとても斬新で良かったと思いました。

ただ、CGはジョボかった。

 

内野聖陽さん演じる893の親分の幼少期のトラウマが、正直失笑もの。

そもそも、それをトラウマとして抱えているのに、落とし前で小指ちょん切っちゃうお仕事されているかも謎。

 

石井杏奈さんは楽しみにしていたのですが、面白味の無いキャラクターで残念。

彼女のトラウマもよく分かりませんでしたし、車中で○○しちゃう意味も不明。

この役を引き受けてしまったことが杏奈さんのトラウマにならなければと願うだけです。

 

成田凌さんは危ないサイコパス的キャラクターを見事演じていたと思います。

このような変わり者(まともじゃない)役は本当に上手ですね。

 

ですが、医者のせがれという設定で、「結局それか?」と思う彼のトラウマにはガッカリ。

この映画の撮影で金魚が最低2尾(おそらくそれ以上)死んでおります。(合掌)

 

本日のメインイベンター、岸井ゆきのさんは上映開始1時間くらいから登場しますが、彼女が登場してから、逆に映画のトーンが下がってしまっておりました。

それは岸井ゆきのさんの演技の問題では無く、監督の力量不足からだと思います。

本当でしたら、ここからが山場だったのですが・・・。

 

彼女の正体を知ってしまった綾野剛さん演じる名越が涙するシーンはもっと感動できると思える場面でしたが、監督がホラー映画専門の方なので、それを求めてしまうのは酷かもしれません。

 

「良かった」とまでは言えませんが、原作とは違うと言われる救いのあるエンディングは嫌いではありません。