『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
原題:The Power of the Dog
2021年製作/イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・アメリカ合作映画/上映時間:128分/G/2021年11月19日日本公開
監督:ジェーン・カンピオン
ジェシー・プレモンス ほか
1920年代のアメリカ・モンタナ州を舞台に、無慈悲な牧場主と彼を取り巻く人々との緊迫した関係を描いた人間ドラマです。
2022年・第94回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演男優賞(ベネディクト・カンバーバッチ)、助演男優賞(ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー)、助演女優賞(キルスティン・ダンスト)、脚色賞など計11部門12ノミネートされ、同年最多ノミネート数になり、ジェーン・カンピオンが最優秀監督賞を受賞。
あらすじ
1920年代のアメリカ・モンタナ州。周囲の人々に畏怖されている大牧場主のフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)は、夫を亡くしたローズ(キルステン・ダンスト)とその息子ピーター(コディ・スミット=マクフィー)と出会う。ローズに心を奪われるフィルだったが、弟のジョージ(ジェシー・プレモンス)が彼女と心を通わせるようになって結婚してしまう。二人の結婚に納得できないフィルは弟夫婦に対して残忍な仕打ちを執拗(しつよう)に続けるが、ある事件を機に彼の胸中に変化が訪れる。
(シネマトゥデイより)
トーマス・サヴェージの同名小説を『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオンが監督を務めた人間ドラマです。
冷酷な牧場主が、ある女性をめぐって弟に激しい憎しみを抱く姿が描かれます。
Netflixにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
何やら、イギリスのNetflixで突如、理由も分からず本作が配信から削除されたとのニュースを知りました。
イギリスではBDやDVDという映像ソフトが販売されておりますが、日本ではNetflix以外鑑賞方法が無いため、「もし日本でも配信が削除されたら」と思い、とても観たいと思っていた作品なので、取りいそぎ今回は本作を選びました。
大牧場主のフィル・バーバンクと弟ジョージの兄弟は、地元の未亡人ローズと出会う。ジョージはローズの心を慰め、やがて彼女と結婚して家に迎え入れる。
そのことをよく思わないフィルは、2人やローズの連れ子のピーターに対して冷酷な仕打ちをする。
しかし、そんなフィルの態度にも次第に変化が生じ、やがて⾃分の中にある愛が何なのかを突き付けられとき・・・。
壮大な大自然をバックに、人間の持つ妬みや憎悪を描いた、かなり異色の西部劇と言える作品でした。
ロケーションが美しく、感動的でした。
トーマス・サヴェージの自伝的な小説が原作になっております。
タイトルは聖書の詩篇「私の魂を剣から、私の命を犬の力から救い出して下さい」から採られており「犬」は邪悪を意味しているそうです。
実生活でもパートナーのキルスティン・ダンストとジェシー・プレモンスが夫婦を演じております。
どうでもいいことですが、歴代MJは共演者とカップルになるようですね。
『アメイジング~』のエマ・ストーンはアンドリュー・ガーフィールドと(婚約まで行きましたが、別れちゃっております)。
『ホーム』シリーズのゼンデイヤはトム・ホランドと。(ウワサですと9億円の豪邸に一緒に住んでいるそうです)
・・・キルスティン・ダンストだけ違うのはお相手がピーター・パーカーでは無いことでしょうか?
「ホンモノの男(漢?)とはなんたる者か?」なるテーマ・・・と思わせ、実は同性愛を描いた作品だったのでビックリしました。
原作者のトーマス・サヴェージもゲイだったとのこと。
『君の名前で僕を呼んで』のような映画では無いので、直接的な描写は一切ありません。
「これが同性愛を描いた映画」と気づいてのも終盤になってからでした。
カンバーバッチ演じるフィルはイエール大学を出たエリートで、ラテン語を話せるインテリでもあり、カウボーイ。
口も悪く、差別的な考えや主義を持っております。
印象的なシーンがありました。
ピアノの練習をするダンスト演じるローズがなかなか上手に弾けず、それを一度聴いただけで完コピしてバンジョーで弾いてみせるフィル。(『アマデウス』みたいですね)
しかし、愛とは無縁のフィルは弟の幸せをよく思わず、苛立ち、義妹であるローズに冷たく当たります。
彼の持つ複雑な内面をカンバーバッチが見事な演技で表現しておりました。
彼にオスカー与えてもおかしくなかったと思いました。
・・・が、あの”ビンタ”のあとでの投票なら受賞した可能性ありましたが、時すでに遅し。
カンバーバッチなら別の方法でクリス・ロック、懲らしめたかもしれませんが・・・。(そっちの方がより危険な気が)
本作でオスカーにノミネートされたコディ・スミット=マクフィー。
先日鑑賞した『エルヴィス』にも出演しておりましたが、カンバーバッチに負けない演技を披露していたと思いました。
『X-MEN:アポカリプス』(2016)などに出演していたそうで、なんか本作、マーベル系映画に出演した人が多く出ていると思ってしまいました。
『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』を観たとき、西部劇のスターはジョン・ウェインでは無く、クリント・イーストウッドなんだな~と思いました。
私の勝手な解釈ですが、映画の雰囲気など、どことなく本作はイーストウッドに捧げられているように感じました。
フィルの憧れる亡き師の名前がブロンコ・ヘイリーと言います。
本当に勝手な思い込みなのですが、イーストウッドの傑作『ブロンコ・ビリー』(1980)から来ているように思いました。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、終盤の展開はイーストウッドが出演した超・異色ヘンタイ映画『白い肌の異常な夜』(1971)を彷彿させるようなものでした。
そのリメイクにキルスティン・ダンストが出演していたのは単なる偶然なのでしょうか?
西部劇と言うより、心理スリラー&サスペンス的な心にズシリと来る映画でした。
鬱映画と言ってもいい内容&ストーリーなので、観る人を選んでしまうかもしれませんが、かなり優れた出来の映画であるのは間違いありません。
第79回ゴールデングローブ賞では『コーダ あいのうた』を破り、ドラマ部門で最優秀作品賞を受賞しております。