『伯爵』
原題:El Conde
2023年製作/チリ映画/上映時間:111分/日本劇場未公開作品/2023年9月15日よりNetflixにて配信開始
監督:パブロ・ラライン
出演:ハイメ・バデル
グロリア・ムンチマイヤー
パウラ・ルクシンゲル ほか
『スペンサー ダイアナの決意』(←この作品観たいんですよね)などで知られるチリの名匠パブロ・ララインによるダークなホラーコメディ(コメディなのかな?)です。
2023年・第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞。
本年度・第96回アカデミー賞において、撮影賞にノミネート。
あらすじ
廃虚のような屋敷に暮らす吸血鬼のアウグスト・ピノチェト(ハイメ・バデル)。人間の生き血を飲みながら250年も生き永らえてきたが、生きることに疲れ、永遠の命を手放すことを決意するが、家族は最後にもうひと仕事してからでないと死なせないと反対する。やがて彼はある人物との交流を通じ、反革命的な情熱を持って生き続けることに希望を見つける。
(シネマトゥデイより)
チリの名匠パブロ・ラライン監督が、祖国チリの独裁者だったアウグスト・ピノチェトを題材に描くホラー映画です。
吸血鬼として250年も生き続けてきたピノチェトが、生きる力をなくしながらも、ある出会いによって新たな目標を見いだす姿が描かれます。
Netflixにて鑑賞。
初めての鑑賞になります。
第96回アカデミー賞特集、第2弾と言うことで、本当は何かしら受賞した作品が良かったのですが、最多受賞の映画がまだ日本で公開されていない状況。
配信で観れるとすれば、追加料金払っての『バービー』くらいしか無いので、このモノクロ吸血鬼映画を選んでしまいました。
今回は前日記事を書いた段階で知らなかった授賞式のことを中心に記事にいたします。
あまり映画のことは書けないと思いますし、またまた長い記事になることをご了承いただければと思います。
日本時間3月11日に開催された第96回アカデミー賞授賞式において、かなり物議を醸す出来事が起きてしまいました。
それは助演男優賞受賞のロバート・ダウニー・Jr(以下、ダウニー・Jr)、主演女優賞受賞のエマ・ストーン(以下、エマ)の登壇のときに起こってしまいました。
百聞は一見にしかず。
まずは、事が起こった順番は後ですが、エマの動画からご覧ください。
※日本語字幕は入っておりません。また動画は削除される可能性が高いです。※
(2024年4月7日、やっぱり動画削除されちゃいました。😭)
・・・このエマの動きに「アジア人への差別」と思われたのが、前年受賞者であるミシェル・ヨー(以下、ヨー)をジェニファー・ローレンス(以下、ジェニファー)の方へ移動させ、ジェニファーから受け取ろうとした行動がそう思わせたとされております。
エマとジェニファーが親友で、どうもヨーのInstagramによりますと「エマ、おめでとう! あなたを混乱させてしまったけど、私はあなたの親友のジェニファーと一緒に、あなたにオスカー像を渡す栄光の瞬間を共有したかったんです!」とあります。
何でしょう?
このInstagram通りだとすると、ヨーの粋な計らいはいいとは思うのですが、誤解を招くことになってしまったのも事実。
逆にエマから何のコメントも発せられていないことの方が気になりますね。
わたくし、個人的意見では、久々にジェシカ・ラングのお姿拝見できたのが嬉しくもあり、ちょっと観たくなかったな~という気持ちも。(←それも失礼やろ!)
ただ、なぜこれが「アジア系への差別」と思われたのかと言いますと、その前に行われた助演男優賞の発表のシーンがあったからです。
こちらも動画で紹介いたします。
・・・これは、ハッキリ言って酷い。
プレゼンターの前年受賞者であるキー・ホイ・クァン(以下、キー)と目も合わせず、黒人のマハーシャ・アリもチラッと顔を見た程度。
これでは”人種差別”と思われても仕方ありません。
スターク社の株も大暴落ですね。
キーからオスカー像を受け取った姿は「まるでバーテンの青年からシャンパンを受け取るような仕草」とアメリカ国内からも批判が。
まさにそんな感じ。
それ以外でも「(キーと)目を合わせることもなく、オスカーを奪い取ったように見えた」、「受賞スピーチ(主にプレゼンテーターに対して)に関し、とても残念だった。キーに対して軽蔑的」、「満面の笑みでトロフィーを手渡したのに、あからさまに無視した。大スターなのに謙虚さや品格はゼロ」、「意図的であったかどうかは分からないが、クールじゃない」などの声が寄せられました。
こちらはステージ裏での記念撮影。
クリストフ・ヴァルツ(写真一番左)は笑顔も無くキレているようにも思えちゃいます。
ダウニー・Jr擁護派の意見で「アジア人への差別だとは大げさ」、「(プレゼンターが5人いたため)たまたま誰にあいさつしてよいのか混乱しただけ」とあります。
・・・では、こちらの動画をご覧ください。
初ノミネートで受賞した主演男優賞のキリアン・マーフィ。
彼はスピーチ前にプレゼンター5人と握手を交わしております。
プレゼンターの多さが理由にならないことを証明していると言っていいでしょう。
要は人間性だと思います。
ダウニー・Jrは映画監督の父親を持つ、2世俳優。(お父さんは存知あげませんが)
1987年の『レス・ザン・ゼロ』で注目され、1992年、喜劇王・チャーリー・チャップリンを演じた『チャーリー』(この映画は大好きです)でアカデミー賞主演男優賞候補になります。
しかし、8歳のときから父親に与えられたマリファナ(凄い父ちゃんだな?)の常習者となり、薬物問題で6回逮捕され、拘置所から撮影所へ向かったなる逸話も残っているそうです。
ハリソン・フォードの奥方の主演テレビドラマにゲスト出演。
ゴールデングローブ賞を受賞します。
しかし、2001年4月に撮影中コカイン所持で再逮捕され、番組降板に。
路線変更で視聴者は困惑し、ハリソン・フォードの奥方はショックで倒れられたそうです。
(Wikipediaを参考にさせていただきました)
その後はメル・ギブソン、ジョージ・クルーニーらの援助もあり、小さな役ながら映画に復帰し、『アイアンマン』(2008)で完全復活を果たしました。
(ステージ裏でガッチリ握手のキーとダウニー・Jr。これをステージでやっていればね~)
私はこのような前科のある俳優の復帰に関し、歓迎まではしないものの、反対もしておりません。
罪を償い、しっかり更生したのであれば、演技力があればチャンスを与えてもいいと思っております。
それで見事カムバックしたダウニー・Jrですが、このキーに対する態度ですべてが台無しになっちゃった感があります。
日本のヤフコメなどでも「もうコイツの映画は観ない」なる否定的意見が圧倒的でした。
私はこれまでも言ってきたようにアカデミー賞は「偏見の塊」だと思っております。
才能を評価・・・より妬み、特定の人物への嫌がらせにも思えるノミネート方式など、かなり問題があると感じております。
特にトム・クルーズ、レオ様、スコセッシに対する扱いが酷すぎます。
映画ファン・・・と言うより『バービー』支持者からは「ライアン・ゴズリングが受賞していれば、こんなことにはならなかった」なる意見も。
私もライアン・ゴズリングとキャリー・マリガンという大好きな映画『ドライヴ』(2012)のおふたりが受賞したら良かったのにと思っちゃいました。(笑)
・・・ただ、今回のエマとダウニー・Jrの態度で「良かった」と言えることなど無いと思いがちですが、逆にこれでアジア系の人は「これがアメリカの白人の本性」と分かったことはいい機会だったと言えるかもしれません。
ダウニー・Jrは意図的にキーへ不快な行動をしたワケでは無く、これが自然の振る舞いとして、このような態度を取った。
アメリカの白人にとってアジア系の人間など、所詮シャンパンの瓶程度の存在と思われていた。
つまり、その方がよほど残酷だと言うことです。
MLB(メジャー・リーグ・ベースボール)でイチローさんや大谷翔平選手(写真)が記録的な活躍をしておりますが、彼らにすらアジア系という理由だけで酷い言葉を罵られることが観客だけで無くチームメイトからもあるそうです。
日本で輝かしい成績でアメリカへ渡った選手があまり活躍できず戻ってきた例がありますが、アメリカで仕事するということは成績だけで無く、このような差別に打ち勝つ強靱な精神力が必要と言うことだと思います。
これからMLBを目指す選手は、このような差別がまだ平然と行われていることをキモに免じておかなければいけないと今回のダウニー・Jrの行動で分かったと思います。
もちろんすべてのアメリカ人がアジア系に差別意識を持っているワケではありません。
長編アニメーション賞のプレゼンターを務めたアニャにゃんことアニャ・テイラー=ジョイは日本語で「おめでとう」と祝福の言葉を贈っております。
ロバート・ダウニー・Jr、58歳。
エマ・ストーン、35歳。
キリアン・マーフィ、47歳。
アニャ・テイラー=ジョイ、27歳。
一番大人な行動だったのは誰かな?
映画の感想に戻ります。
正直、あまり「面白い」とは思いませんでした。
チリの映画を観るという機会はほとんど無いので、そこは良かったのですが、お勉強が足りませんでした。(汗)
吸血鬼ものは自分は会わないのかもしれません。
クリステン・スチュワート主演のあのイライラするシリーズも(そう言いながら彼女好きなので完結編まで観てしまいましたが)面白く無かったですし、まあ良かったと思えたのはトム・クルーズ&ブラッド・ピット主演の作品だけのように思います。
チリの独裁大統領の正体は吸血鬼だった。
さらに”鉄の女”サッチャーも吸血鬼だった。
それに加え、その大統領の巨万の遺産を巡る骨肉の争いという『犬神家」テイストを織り交ぜた、たしかにコメディと言える作品かもしれませんが、笑えなかった・・・。
しかもグロいシーン満載。
モノクロの映像は美しかったです。
ですが、ギロチンで切られたマリー・アントワネットの生首をホルマリン漬けして飾っていたり、ちょっと悪趣味に思え、生首オンパレードなので、これまた『犬神家』を連想させられてしまいました。
あまりオススメはいたしません。
お暇でグロ問題ナッシングなら「どうぞ」と言った感想でした。
※日本語字幕は入っておりません。※